約 3,277,199 件
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/9730.html
N1/W32-119 カード名:定めの魔法少女 フェイト カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 パワー:7500 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《クローン》? 【永】 あなたの手札が5枚以下なら、このカードのパワーを+1500。 母さんの願いを、かなえてあげたいの レアリティ:PR ブースターパック 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st 2nd A's」 BOX封入特典
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3449.html
―――9 クラナガン市第11区ホルテンマルス通り。 陸上部局機動一課第18師団226陸士部隊は、スィンドル及びドロップキックなどのドローンたちと、文字通り死闘を演じていた。 胸部の砲塔を展開して次々と砲弾を撃ち込んでくるドローン部隊に対して、陸戦魔導師たちはバリアやシールドだけでなく、時に素早く移動し、 時に建物や車を盾代りにして攻撃を避ける。 そして、砲撃が止むのと同時に部隊全員の攻撃魔法をドローン一体に集中させて確実に倒して行くという、ゲリラ戦的な方法で本局ビル方面 へ侵攻するドローン部隊を足止めしていた。 しかし、ドローン部隊と陸士部隊の火力と装甲の差は如何ともし難く、陸士部隊は後退に次ぐ後退を強いられていた。 「くそっ、何なんだあいつらは!!」 ワゴン車の陰に隠れている、恐竜のような顔立ちのと鱗の肌をした陸士が、デバイスにカートリッジを装填しながら悪態をついていた。 「何が大型ガジェットドローンだ、車に変形する人型GJなんて見たことも聞いた事もねぇぞ!」 その隣でベルカ式ポールスピア型デバイスを構えた、脳が見える透明の頭をした三本指の陸士が、攻撃が止んだのを機に頭を少し上げると、 ドロップキックがこちらへ砲口を向けるのが見えた。 「おい、逃げろ!」 仰天した表情の陸士が、同僚の腕を引っ張って歩道へ逃げ出すのと同時に砲弾が車を襲い、直撃を受けた車が大爆発して路上を転がって行く。 路地に伏せて爆発を避けた、鶏冠のついた四本の大きな皺の走った頭をした指揮官を務める陸曹は、陸士二名を路地に呼び寄せると、回復した ばかりのモニターに向かって怒鳴りつける。 「こちら陸士226部隊、これ以上は持ち堪えられそうにないぞ! 増援はどうしたんだ!?」 モニターの向こうでも、通信担当の士官が、同じくらい大きな声で怒鳴り返してきた。 「現在EW-TT隊がそちらに急行している、もう少し我慢してくれ!」 「了解した!」 陸曹はそう言ってモニターを切ると、懸命に闘っている部隊へ振り向いて笑いながら声と念話の両方で呼びかける。 「応援が来るぞ! 後ちょっとの辛抱だ、踏ん張れ!!」 その言葉に力を得た魔導師は、了解の意を示す陸士部隊共通の掛け声を一斉に上げた。 「ウーオッ!」 戦車に蜘蛛のような多関節脚を六本くっ付けたような形の、“歩行戦車型アインヘリアル(Einherial Walking―Tank Type 略称EW-TT)” 五両は、本局ビルNMCCより指示のあった場所へ急行しつつあった。 「前方に爆炎を確認!」 前席の、亀の甲羅のような頭に虎の様な牙を口から生やしたパイロットからの報告に、穴のような耳と肩に棘を生やした、部隊長を務める一尉の 階級章を付けた士官がペリスコープ用のモニターを開く。 すると、ロボット軍団と追い詰められつつある陸戦魔導師部隊の激しい攻防戦が、目の前に映し出された。 「ありゃ一体何だ?」 今まで見た事のない人型ロボット兵器に、車内の乗員がざわめき始める。 「落ち着け!」 部隊長が周囲の窘めるように大声を上げる。 効果覿面。その一喝に、車内のざわめきが水を打ったように静まり返った。 「何であれ目の前の敵は叩き潰す、只それだけの事よ! カートリッジロード!」 一尉の指示に、砲手が155ミリ砲弾サイズのカートリッジを砲型のデバイスに装填すると、EW-TT車体真下の路面に、ミッド式魔方陣が展開 される。 「来たぞ! 増援部隊だ!!」 EW-TTを見た陸士が仲間たちに大声で呼び掛けると同時に、隊長の眼前にEW-TTから空間モニターが開かれる。 「こちら機動一課 第89師団 陸士209部隊 重魔導車両部隊だ。これから敵GD部隊に対して攻撃を行う、至急後ろに退ってくれ」 連絡を受けた陸士部隊は、ロボット軍団に対して牽制の攻撃魔法を放ちながら、EW-TTの後ろへ後退する。 「陸士部隊の後退完了、目標までの距離、約百五十百メートル!」 土偶のような、縄のよれたような皺だらけの顔に、上唇にサーベルタイガーのような二本の牙を持つ観測手兼砲手の報告を受けて、一尉は矢継ぎ 早に部隊へ指示を出す。 「全隊、照準を本車真正面の人型GD部隊中央に!」 一尉の指示を受けて、EW-TTの全車の照準がスィンドルたちの中央部にセットされる。 こちらに向けて歩行戦車がやって来た事に気付いたドローンは、攻撃目標を目前の陸士部隊からEW-TTに変更する。 「敵部隊より攻撃が来ます!」 砲手から報告を受けた一尉は、即座に命令を下す。 「プロクテション!」 デバイスがフィールドを張るのと同時にスィンドルとドロップキックがEW-TT目掛けて一斉に砲撃する。 だが、砲弾はフィールドに弾かれるか、突き抜けても車体を貫く程の力はなく、虚しく跳ね返るばかり。 「ディバインシューターセットアップ!」 隊長の号令一下、砲手がデバイスのチャンバーレバーを引くと、EW-TTの砲口に紫色の丸い光が現れる。 「ディバインシューター、セット完了!」 砲手の言葉を受けて、隊長はEW-TT全車両に命令を下した。 「撃て(シュート)!」 その声と同時にEW-TT全車からまばゆい光の球が放たれた。 ドロップキックとスィンドルたちは回避行動をとるが、迸る魔力が嵐となってドローンたちを巻き込んで行く。 回避が間に合わなかったドローンのボディを突き抜け、周囲の仲間を巻き込み、吹き飛ばしながら、ディバインシューターはしばらくの間路上を荒れ 狂っていた。 魔力の嵐が収まり、舞い上がっていた誇りが落ち着くと、魔導師たちをあれ程苦しめていた二足歩行の巨大ロボットの大群が、今や物言わぬ スクラップとなって横たわっていた。 「ほう」 メガトロンは腕を組んで感心したように頷きながら言う。 「エネルギーを収束させて、強力な弾丸として撃ち出す…か。ひ弱な炭素生物にしては中々知恵が回るようだな」 「ですが所詮はチビどもの玩具、我々が本気を出せば一捻りですよ」 スタースクリームがそう言って唾でも吐くように口からオイルを飛ばすと、メガトロンは腕を挙げて窘めるように言う。 「その通りだが相手を甘く見過ぎると、思わぬところで足元を掬われるぞ」 メガトロンは次に、マイクロ波による無線通信でクラナガン市街へ呼びかける。 “ボーンクラッシャー” メガトロンから指名された大型の質量兵器用特殊工作トラックは、呼びかけを無視して百キロ以上のスピードで市内を暴走していた。 前方の車を自らの巨体で弾き飛ばし、時には建物に体当たりして崩壊させ、街灯や人間をボウリングのピンのように轢き倒していく。 車体のアームで乗用車を掴み、攻撃魔法を撃ち込みながら追って来る空戦魔導師部隊目掛けて投げつけるなど、傍若無人の限りを尽していた。 “ボーンクラッシャー、聞こえてる筈だ、返事をしろ!” メガトロンからより厳しい口調で詰問された時、ボーンクラッシャーは初めて返事をする。 “聞こえている、何か?” ボーンクラッシャー返事が来ると、メガトロンはクラナガン市街の地図を転送しながら指示を下す。 “敵が戦車を担ぎ出してきた、ドローンどもが苦戦しとるから片付けて来い。 場所は第11区のホルテンマルス通りだ” “了解” ボーンクラッシャーは簡潔に答えると、更に加速して魔導師たちの追撃を振り切り、目的地へと向かった。 NMCCの超大型空間モニターにはクラナガン市街の地図が表示され、市街各所で繰り広げられている陸・空戦魔導師部隊と正体不明のロボット 軍団の戦闘状況が、青と赤の矢印で表示されている。 その周囲を取り囲む無数の空間モニターには、市街戦の映像が映し出されていた。 ロボットからの砲撃を受けた魔導師が、木の葉のように吹き飛ばされるのが映った時、なのははレイジングハートのチェーンを強く握りしめた。 「焦るな」 なのはの焦りを察知したゲンヤが、諭すように言う。 「切り札ってものは、やたらと見せびらかすもんじゃねぇ、ここ一番って時に切るからこそ活きるんだ」 ゲンヤの言葉に頷き、内心の葛藤を必死に闘いながらなのはは答える。 「分ってます、分ってますけど……っ」 今度は長官が冷徹な口調でなのはに言った。 「自分一人で総てを背負えると思っているのか?」 自分でも思い上がりと意識している事を冷静に指摘された事に、なのはの表情が怒りを帯び、口調が自然と荒くなった。 「そんなつもりは……!」 「なのはちゃん!」 はやてがそう言って腕を抑えなければ、なのはは長官に食い掛っていたところであろう。 「も、申し訳ございません…!」 我に返ったなのはは、自分がしでかしかけた事の重大さを悟り、慌てて長官に頭を下げた。 「いや、いいんだ。気にしないでくれ」 長官は笑いながら手を挙げてなのはの謝罪を受け入れると、自分の眼前にあるモニターに目を向けながら小さくつぶやいた。 「私自身も同じ思いだよ、長官としてもっと出来る事があるのでは…? とな。 だが、実際に人手はあまりにも足りなく、示せる選択肢は極めて限られる…。 まったく、この世は思い通りならな事ばかりだな」 この呟きをゲンヤは聞いていたが、彼は何も言わなかった。 デモリッシャーの車輪をかいくぐりながら、チンクは苦内型の固有武装“スティンガー”を続けざまに投げつける。 総てデモリッシャーの顔で炸裂するが、相手は怯む気配すら見せない。 「チンク姉、だめだ。でか過ぎてあたしらの攻撃魔法じゃ埒が明かない!」 「あきらめるなノーヴェ!」 ノーヴェが歯ぎしりするノーヴェを叱咤するが、チンク自身も口の中で小さく呟いた。 「とは言え、こちらも手詰まりか…」 “チンク姉、聞こえる?” ディエチから念話で呼びかけられたチンクは、デモリッシャーの攻撃圏から一旦離脱し、等距離を取って監視しながら返事する。 “どうしたディエチ?” チンクからの問いかけに、まるで躊躇うかのように少し間が空いた後、ディエチが念話を再開する。 “あの化け物は…悪いけど、多分私達の手には負える相手じゃないと思う” チンクも悔しそうに歯噛みしながら、ディエチの意見に同意する。 “そうかも知れん、だが他の部隊も手が回らない以上、我々だけで対処するしか…” その返答を予期していたのだろう、ディエチからの返答はチンクの考えを首肯しながら、自分の考えを伝えるものだった。 “うん、そうだね。それで…倒せなくても、もしかしたら動きを封じる事が出来るかも知れない。 チンク姉、そいつを何とか海側におびき寄せられない?” “難しい事を言ってくれるな…” チンクは苦笑しながらも、ディエチに了承した旨を伝える。 “分かった、何とかやってみる” チンクが答えるのと同時にデモリッシャーの後頭部が開き、中から数十発のミサイルが一気に発射された。 「いかん! 全員散開!!」 それを見たチンクが大声で指示を出す。 空へ上がったウェンディとチンク、そして地上を全力で疾走するノーヴェ目掛けて、ミサイルが獲物に群がるピラニアの如く追ってくる。 「誘導弾ッスか!」 逃げ切れないと悟ったウェンディは、振り向くとISを起動させる。 “フローターマイン” デバイスが声を発すると、ピンク色に光る数十個の魔力球がウェンディの前にカーテン状に展開される。 ミサイル群が突き抜けようとすると、球は一斉に爆発を起こし、そこにまともに突っ込む形なったミサイルも全弾誘爆を起こした。 「ウェンディ、無事か?」 スティンガーでミサイルを防いだチンクが、ウェンディの横で並列飛行しながら尋ねる。 「大丈夫ッス!」 ウェンディが親指を挙げて笑顔で返答するのを確認すると、チンクは次に地上へ眼を向ける。 「ノーヴェは?」 それに応えるかの様に、エアライナーに乗ったノーヴェがこちらへ向けて昇って来るのが、二人の眼に写った。 「敵GD部隊、完全に沈黙!」 砲手と各車両から同じ報告を受け取った部隊長は満足げに頷く。 「ここからもっとも近い戦場はどこか、本局に問い合わせてくれ」 指示を受けた通信士が本局と連絡を取り始めた時、運転士のモニターに突然“未確認車両接近中”という警告が表示された。 「隊長、前方より所属不明の車が一台近付いて来ます」 運転士は自分のモニターの映像を、部隊長のところに転送する。 そこには、危険物処理や災害現場の後片付け用に陸士部隊へ配備されている大型特殊車両が、ドローンの残骸を掻き分けながら近付いて来る のが映っていた。 「こちらは機動一課 第89師団 陸士209部隊所属の重魔導車両部隊である、貴方の所属を知らせよ」 EW-TTからの問いかけに返答せず、特殊車両は無言のまま近付いて来る。 「全車、ディバインシューターセットアップ!」 指示を受けたEW-TT全車の足元に、ミッド式魔方陣が再び展開される。 「撃て!」 ディバインシューターが発射されると、特殊車両は弾道を予測したかのように、反対車線へ移動して、魔力弾の直撃を避ける。 先程だったら、直撃しなくとも衝撃波で吹き飛ばされる筈だが、特殊車両はそんなもの存在しないかのように、悠然と走っている。 「なにっ!?」 その様子を見ていた部隊長が驚きの声を上げる。 まるでそれを合図としたかのように、特殊車両は急加速してEW-TTとの距離を瞬く間に詰めてくる。 「全車後退!」 部隊長がそう怒鳴るのと、特殊車両が変形を始めて“デストロン軍団破壊兵ボーンクラッシャー”の正体を現したのは同時であった。 ボーンクラッシャーは、今や巨大な拳と化した障害物及び危険物除去用のアームを上から叩き付け、一両目のEW-TTをまるで蠅でも叩くかの ように苦もなく潰す。 潰した車両を掴み上げると、左側のEW-TTに叩き付けて横にひっくり返し、次に正面の三両目に投げ付けて擱座させる。 「ディバインバスター準備!」 目まぐるしく変わる状況に、部隊長は覚悟を決めた表情で指示を下す。 四両目を撃破したボーンクラッシャーが隊長機を掴んだ瞬間、部隊長は攻撃命令を出した。 「撃て!」 零距離で撃ち出された砲撃がボーンクラッシャーを直撃、まばゆいばかりの閃光と埃が舞い上がり、辺りを覆い尽くす。 車内の全員が固唾を呑んで見守る中、埃が晴れて来ると、EW-TTの必死の反撃を嘲笑うかのようにボーンクラッシャーが悠然と立っていた。 「そんな…!」 部隊長が絶句すると同時にボーンクラッシャーが再びEW-TTを掴んで軽々と持ち上げる。 車内の乗員は全員シートベルトを付けていたので放り出される事はなかったが、突然天地がひっくり返った事に恐慌を来たす。 ボーンクラッシャーは車両を軽々と持ち上げると、路上で民間人を退避させていた陸士部隊目掛けて放り投げた。 「こちらボーンクラッシャー。邪魔者は総て片付け―――」 結果は見るまでもないと判断して報告を始めたボーンクラッシャーは、いつまでも重車両が路上に激突する音が響かない事に不審を抱き、途中で 報告を止めて振り返った。 先程までドローン達と戦っていた魔導師部隊は、EW-TTが後を引き継いで以降通りに残って戦闘を眺めていた民間人の避難誘導を行っていた。 ボーンクラッシャーが車両部隊を潰し始めると、隊長は民間人の避難と同時に、手の空いた陸士達を、破壊された車両の乗員の救助に向かわせ ようとするが、その暴れっぷりに近づく事すら出来ない。 このままでは自分達もやられる。 そう判断した隊長は民間人の避難が完了次第、陸士達も退却するよう、断腸の思いで命じる。 最後の家族連れを連れて隊長達が退避しようとした時、ボーンクラッシャーが放り投げた車両が、こちらへと飛んで来るのが見えた。 「逃げろ!」 呆然として動けない家族連れと部下達に怒鳴りながら、我が身を犠牲にする覚悟で隊長はプロテクションを展開する。 その時、彼の横を猛スピードで人影が横切り、跳び上がるとEW-TTに飛び付いた。 路上に十数メートルの擦過痕を残し、重戦車並の重さのEW-TTを人影は一人で受け止めながら、隊長達の眼前で停止する。 白のジャンパーと短パン型のバリアジャケットに、ローラーブーツにハンドガード型のデバイスを装着した人影は、隊長に振り向いて尋ねる。 「機動五課 第58師団 陸士556部隊所属のスバル・ナカジマです。怪我はありませんか?」 問い掛けに隊長が頷くと、スバルはモニターを開く。 「シャマル先生、スバルです。第11区ホルテンマルス通りで民間人数名と陸士部隊を救助。負傷者もいる模様です。至急後方への搬送をお願いします」 「分かったわ。今、そちらに向かうから」 モニターから声がすると同時にスバルの横で緑色に輝く鏡が出現し、中から緑のロングドレスのバリアジャケットを着たシャマルが出て来た。 「次元部局タイコンデロガ医務官のシャマルです。皆様、こちらから避難して下さい」 シャマルの指示に従って家族連れは鏡の中へと入って行き、一方スバルはEW-TTのドアを力任せに引き開ける。 「大丈夫ですか?」 スバルの呼び掛けに、部隊長がシートベルトを外しながら答える。 「私は大丈夫だ、だが、部下が…」 スバルと部隊長が怪我をした乗員を外へ運び出していた時、砲弾が頭上のビルの壁を穿ち、破片が擱座したEW-TTの車体に降りかかる。 攻撃のあった方をスバルが見ると、新たにやって来たドローンたちが、砲撃しながら近付いて来るのが見えた。 「シャマル先生、敵GD部隊は私が食い止めますので、怪我人をお願いします」 スバルがそう言うと、シャマルがEW-TTの所へ駆けて来る。 「言っとくけど、危険と判断したら即座に撤収しなさい」 シャマルの言葉に、スバルは敬礼で返した。 EW-TTからこちらへ向かって来るスバルに、ドローン達は砲口を向ける。 雨あられと撃ち込まれる砲弾をスバルはジグザグ運動で回避し、通りの左端に立っていたスィンドルの足元に蹴りを入れて仰向けにひっくり返す。 隣にいたドロップキックが砲撃するが、スバルは跳び上がってそれを回避し、弾は倒れたスィンドルを木っ端微塵に吹き飛ばす。 スバルはそのままドロップキックの肩に飛び乗ると、背中をナックルダスターで殴り付ける。 後ろからいきなり強く突き飛ばされる形になったドロップキックは、砲を乱射しながらグルグル回り、周囲のドローンを次々とスクラップにしていく。 背中にいるスバル目掛けて、ドローン達が一斉に飛び掛かる。 レッゲージがドロップキックの背に飛び付き、ニ体は縺れ合って路上に倒れる。 しかし、その時にはスバルは再び宙を舞っており、スィンドルの頭上に降り立つと脳天にリボルバーキャノンを叩き込んで粉々に粉砕する。 火花を放ち、身体を小刻みに震わせながら倒れたスィンドルの上に、スバルは悠然と降りる。 後方から別のドローン達がやって来て砲口を開いた時、ボーンクラッシャーがその内の一体を拳で殴り倒す。 “手を出すな! こいつは俺の獲物だ!!” ドローン全員に無線で命令すると、ボーンクラッシャーはスバルへ挑むように、真正面から対峙する。 ドローンを殴った事と威圧感たっぷりに睨み付ける姿。 相手をガジェットドローンと同様の自動兵器と考えていたスバルは、そのあまりに人間的な反応に違和感を覚える。 と、ボーンクラッシャーはスバルに考える暇を与えさせないかのように、足元に転がっていたドローンの残骸を持ち上げて投げ付けてくる。 スバルは盛大なスキール音と共に急発進して残骸を避けると、走りながらカートリッジを再度装填する。 次々と投げられて来る残骸を左右やジャンプして避け、時には真正面に来たものを殴り落としながら、スバルはボーンクラッシャーへと迫る。 ボーンクラッシャーの方も路面の舗装を盛大に巻き上げながら急発進する。 進路上にある残骸や瓦礫を弾き飛ばしながら、ボーンクラッシャーは鉤爪をスバル目掛けて振り下ろす。 スバルは左にステップして回避するが、そこへボーンクラッシャーの右拳が襲ってくる。 それに対してスバルは拳の来る方向に身体を捻らせて攻撃を受け流し、勢いを殺さずに裏拳を肘の辺りに叩き込む。 勢いを流された上に攻撃をまともに受けたボーンクラッシャーは、バランスを崩して横向きに倒れ、その際拳が左側にあるオフィスビルの壁面を破壊する。 スバルは後退して、降って来る建物の残骸を避ける。 埃が濛々と巻き上がって姿が見えなくなったボーンクラッシャーに向けて、スバルは警告する。 「こちらは時空管理局陸上部局機動五課第778師団陸士71部隊所属のスバル・ナカジマです。 当該大型GDに搭乗しているパイロットに警告します、直ちに武装を解除し、GDより降りて降伏して下さい」 次の瞬間、土煙の中からボーンクラッシャーが飛び上がり、スバルの目の前に降り立つ。 「クソ喰らえだ! 止められるもんなら止めてみやがれ!」 中指を突き立て、ミッドッチルダ語で挑発するボーンクラッシャーに、スバルは面食らった表情で素っ頓狂な声を上げる。 「しゃ、喋った!?」 ボーンクラッシャーは、唖然とするスバルを嘲笑う。 「お前らの言葉で話した事がか? 俺に言わせれば、手前ェら単純な炭素生物が言葉や道具を使う方が驚きだがな!」 スバルはその挑発には乗らず、相手がどんな動きを見せてもすぐ対応出来るように、構えを取る。 そんなスバルの様子に構わず、ボーンクラッシャーは言葉を続ける。 「スバル・ナカジマと言ったな? 冥土の土産に教えてやるぜ、俺はデストロン軍団破壊兵ボーンクラッシャーよ! よぉーく覚えとけ!!」 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2856.html
―――6 カリム・グラシアの視界に最初に入って来たのは、聖王医療院の真っ白に塗装された天井と、暖色系の光を放つ据え付け型の室内灯だった。 「騎士カリム?」 その声のした方に顔を向けると、カリムのベッドの傍らでシャッハ・ヌエラが椅子に座って心配そうにこちらの顔を覗き込んでいる。 「シャッハ…」 カリムは一言呟いた後、窓の方を振り向く。 空は夜の帳に覆われ、正面に見える大聖堂が、キャンドルライトで仄かにライトアップされているのが見えた。 カリムは、シャッハに顔を向けて尋ねる。 「私…どれ位気を失っていたの?」 「丸一日眠られてました」 「正確には10時間42分29秒です」 シャッハの後ろに控える、同じ修道士服を着たロングのストレートヘアーに感情の読み取れない表情をした若い女性が、空間モニターを操作しながらシャッハの言葉を訂正する。 「と、いう訳です。騎士カリム」 シャッハが苦笑しながら両手を広げて“お手上げ”のポーズを取ると、カリムも笑みをこぼしながら言う。 「相変わらず、ディードの体内時計は極めて正確ね」 「恐れ入ります」 ディード・ハルベルティルダは、丁寧に頭を下げた。 「失礼します」 ディードと同じ顔立だが、ショートヘアーと執事の格好で一見男女か判別の付かない、中性的な雰囲気の女性が、病室に入って来た。 彼女は、ティーポットと二つのカップに、食べやすいように切られた、赤い色の林檎のような実が並べられた皿の載るカートを持っている。 ディードが空間モニターを操作すると、窓側のベッドサイドから折り畳み式のテーブルが迫り出し、同時にカリムのベッドも上半身部分が持ち上がる。 デザートの皿をテーブルに乗せ、紅茶をカップに注いだ後、頭を下げて退出しようとする二人を、カリムは手で制した。 「オットー、ディード。あなた達も一緒にどう?」 カリムの言葉に、ディードとオットー・ハルベルティルダは顔を見合わせると、これ以上ない見事なユニゾンでカリムに尋ねる。 「よろしいのですか?」 カリムは微笑みを浮かべながら、首を縦に振った。 湯温、葉の匙加減共に完璧なオットーの紅茶と、ディードが選んだ丁度いい甘さのデザートがその場の空気を和ませ、暫くの間は和気あいあいとした雑談が続く。 頃合いを見計らって、シャッハは改めてカリムに朝起きた事についてを訪ねた。 「今朝は何故、気を失われたのですか?」 シャッハの言葉に、カリムは自分のティーカップに視線を落として考え込む。 「はっきり言って、私もよくわからない」 そこで一旦言葉を切ると、今度はシャッハの方を振り向いて言葉を続ける。 「起きた時から、目覚めているのに…まるで意識に靄がかかったかのような感じが…」 今度は天井を見上げ、目を細めて何かを思い出そうとする。 「…心が体から切り離されて浮遊しているかのような感覚…何て言ったかしら?」 「夢遊病…ですか?」 シャッハがそう言うと、カリムは頷いて話を続ける。 「そう、まさにそんな感じね。最後に覚えてるのは、礼拝所でオルガンを弾いてる途中、聖王様のステンドグラスを見なければ…という義務感が突然湧き上がった事。そこから先は覚えてないわ」 「そう言えば、陛下のステンドグラスを見上げられてた時、何か口走ってられる様子が見受けられましたが、その事は?」 ディードの問掛けに、カリムは首を横に振りかけたが、ふと何かを思い出したらしく、顎に手を当てて言った。 「ひとつだけ、覚えている言葉があるの」 「何でしょう?」 「“トランスフォーマー”」 「トランス…フォーマー?」 シャッハがオウム返しに答えると、カリムは頷いた。 「どういう意味なのでしょうか?」 シャッハが尋ねると、カリムは首を横に振った。 「私にも分からない。オットー、ディード、あなた達は?」 二人とも首を横に振って、“自分たちも知らない”と意思表示する。 「無意識の中でそれだけ覚えてた…って事は、相当重要な言葉なのでしょうけど…」 突然、カリムの目の前で金色の輝きを放つカードの形をした物体が現れた。 「“プロフェーティン・シュリフテン”!?」 カリムは自らのレアスキル“預言者の著書”が何の予告も無く突然発言した事に、戸惑いの表情を見せた。 「二つの月の魔力が揃っていないのに…、何故!?」 カードは二枚、三枚、四枚と次々に分裂し、やがてカリムの周囲を輪のように囲んでグルグルと回る。 しばらくして、その中からカードが一枚飛び出して、カリムの眼前で止まる。 旧い結晶と無限の欲望が交わる地 死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る 死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる 「これは…“JS事件”の予言!?」 発現されたカードの文を読んだシャッハが、怪訝な表情をする。 「すでに終わった筈の予言が、何故今になって―――」 シャッハがそこまで言いかけた時、カリムは何時になく厳しい表情で、ハルベル ティルダ姉妹に言った。 「これから法王様へ拝謁に向かいます。オットー、ディード、急ぎ着替えの用意を」 二人が頭を下げて退出すると、シャッハが戸惑った様子でカリムに尋ねる。 「騎士カリム!?」 尋常でないカリムの様子に、シャッハが戸惑った様子で尋ねる。 「この予言が、“JS事件”を指していないとするなら…」 カリムの言っている意味を理解すると、シャッハは自分の顔から血の気が引いて行くのが分かった。 「予言は、まだ終わってない…?」 詰まり気味にシャッハが言うと、カリムは頷いて厳しい表情のまま言葉を続ける。 「もしかしたら、始まってすらなかったのかも知れない。いずれにしても、至急法王様に報告しなければ…」 オットーとディードが外出着を持ってやって来ると、カリムはベッドから降りながらシャッハに言った。 「シャッハ、あなたも立ち会い人として同行して」 「かしこまりました」 シャッハは頭を下げると、空間モニターを開いて法王直属の秘書官へ、至急法王への面会を取り次ぐよう依頼した。 シャーリーはコンソールに両肘を付いて、目の前でリピート再生されている、フレンジーのクラッキング信号をじっと眺めていた。 「これを解析できる可能性のある人間と言えば…」 シャーリーは独り言を呟くと、モニターから顔を上げて周囲を見回して、誰もが仕事に没頭している事を確認。それから空間モニターをもう一つ開いてコンソールを操作する。 「コピー完了」 その表示が出ると、シャーリーは次には右手首上の時計型空間モニターを操作し、タイマーを起動させる。 1 29 59 タイマーがカウントダウンを始めると、シャーリーは急ぎ足で部屋を出ていった。 ジーンズYシャツにジーパンという、シンプルな服装に着替えて本局ビルを出たシャーリーは、歩道や渋滞で動けない車の間を人々が歩く大通りを五分ほど走った後、何かを待つように路肩に立って大通りを見回す。 シャーリーが待つのは、交通渋滞著しいクラナガンで最近人気の、“シュランピーゲ(運び屋)”という動物や人力によるタクシー便。 暫くして、シャーリーが居る側の路側帯を黒衣のフードで身を包んだ人間を乗せた馬がゆっくりやって来ると、シャーリーは両手を大きく振ってその前へ出た。 「ねぇ、待って待って!」 馬が動きを止めると、シャーリーは騎手が何か言う間も与えず、後ろに素早く飛び乗る。 「どちらまで?」 フードで顔も見えない騎手が、低い、歯車の軋りのような声で行き先を尋ねる。 「43区のイトゥメヌゥ通り、大急ぎで!」 シャーリーの注文を受けて、騎手は馬の脇腹を軽く蹴ると、馬は軽快に大通りの路肩を走り始めた。 「時間はどれぐらい?」 シャーリーの質問に、騎手は前を向いたまま答える。 「大体30分ですな」 「チップは弾むわ、20分で行って!」 シャーリーはそう言って財布から高額紙幣を取り出し、騎手の眼前に突き出す。騎手はちょっとの間紙幣を見つめた後、それを受け取って言った。 「かしこまりました、しっかりおつかまり下さい」 騎手が気合いの声と共に手綱を激しく振ると、馬はそれまでとは段違いの速さで走り始め、シャーリーは振り落とされないよう騎手にしっかりしがみ付いた。 イトゥメヌゥ通りのある43区は、機能性を重視したモダン様式の建物が主流の行政・経済区域とは対照的に、アラビアや東南アジア様式が混ざりあったような、独特の民族様式の建物が密集する区域である。 その裏通りは、イスラム教のモスクと同じ形の屋根をした一軒家や、どこかの次元世界の神々のレリーフが壁一面に彫られた高層アパートなどが、所狭しと立ち並んでいて、陽は路面まで射し込む事はない。 蛙か何だかよく分からない生物の干物がびっしりと吊り下げられたり、得体の知れない不気味な生き物の切身や背開きが並べられた、怪しげな露店がズラッと立ち並んでいる。 露店で買い物または値段の交渉(中には揉めた挙句喧嘩)をしたり、屋台の飲食台で酒を飲み交して談笑(または喧嘩)を年末のアメ横を彷彿とさせる活況を呈する中を抜け、シャーリーは更に細い路地へ入る。 路端のゴミを漁っていた羽の生えた恐竜が、シャーリーに驚いて物陰に身を隠し、安楽椅子に座って水煙草を味わっていた、人間に似たゴキブリ型生物が触角を振るわせながら興味深く見やる。 タイの仏教寺院に似た尖搭の屋根をした、比較的大きな一階建ての家に来ると、シャーリーはチャイムを3回鳴らす。 ドアを開けたのは、黄緑色のTシャツにショーツ短パンの、シャーリーとほぼ同年代だが体格は彼女の三倍はあろうかと言う黒人男性。 シャーリーの姿を見た途端、男性は慌ててドアを閉めようとするが、シャーリーはすかさずドアに足を挟み込んで、それを食い止めた。 「シャ、シャーリー!? 何しに来たんだ」 男性はドア越しに、シャーリーを疫病神を見るような目つきでた尋ねる。 「グレン、あなたの助けが必要になったの」 シャーリーの言葉に、グレン・ホイットマンは表情を歪ませて言った。 「勘弁してくれ。以前、そっちの頼みで交通システムにクラッキングした時、危うくこっちの位置がバレそうになったんたぞ」 「だから、バルゴア社の超高密度チップをプレゼントしたんじゃない。あれ、幾ら掛ったと思ってんの?」 「そういう問題じゃ――」 グレンがそこまで言いかけた時、家の奥から老婆と思われるしわがれた、しかしドスの効いた低い怒鳴り声が響いてきた。 「グレンー! 誰が来たんだい!?」 「友達だよ、お婆ちゃん! 心配しないで!」 それに負けじとでかい声で怒鳴り返した後、グレンは意を決したように、ドアを開けてシャーリーを中に入れる。 「ったく、此処は俺の心の安息所なんだぞ。外界の面倒事は一切持ち込まない事にしてるのに…」 苦虫をつぶした様な表情でグレンが呟くと、シャーリーは若干申し訳なさそうに言った。 「突然お邪魔したのは悪かったわよ。でもそれだけの価値は――」 シャーリーの言葉を遮って、再び祖母の金切り声が廊下の奥から響いてきた。 「グレンー! ロダの実のジュースは何処だい!」 それに対して、グレンも負けず劣らずの大きい声で場所を教える。 「冷蔵庫の二段目の棚の奥だよ、お婆ちゃん!」 「…心の安息所?」 シャーリーの疑わしげな視線に、グレンは笑いで返した。 「ちょっとしたBGM、さ」 グレンはシャーリーと議論しながら、自分の部屋へと入って行く。 そこは、様々な次元世界から集められた品々が溢れ、ちょっとした博物館のような雰囲気を呈していた。 部屋には二人の他、グレンと同じような服装をした、外骨格型の体をした半漁人似の友達が、レイジングハートの形をしたコントローラーを両手で持って、大型の空間モニターにそれ向けてゲームをやっている。 彼はグレンを見ると、モニターを指差して叫んだ。 「おい見ろ! “ブラスターモード”まで来たぞ!」 それを聞いた途端グレンの眼が輝き、シャーリーを放ったらかしに、巨体に似合わぬ猛スピードで部屋を突っ切って友達の横に立つ。 「マジか!? 俺、“エクシード”が精一杯だったのに!」 「マジマジ!! もう少しでスターライトブレイカーが射てる!」」 「おおお! スゲェ!!」 エキサイトするグレン達を、シャーリーは呆れた眼で眺めながら呟いた。 「小学生か…」 そんなシャーリーの事など意にも介さず、二人はゲーム上のなのはが、ゆりかご内でスターライトブレイカーを放とうするのを夢中で見入っている。 「スターライト―――」 画面内上なのはが、クアットロに照準を合わせて永唱するのに合わせて、二人も唱和する。 「ブレイカーッ!」 なのはの凛とした声を、シャーリーの言う小学生レベルの青年二人組の野太いダミ声が掻き消す。 画面がピンク一色に染まると、グレン達は手の平を叩き合わせて、歓声を上げた。 余韻冷めやらぬまま、幾つも空間モニターが表情されている自分の席に座ったグレンに、シャーリーはフレンジーの信号が映る小型の空間モニターを開きながら 、猫撫で声で言う。 「ねぇグレン? 国家機密を覗いてみたくなぁい?」 次の瞬間、グレンの眼の色がまたしても変わり、シャーリーのモニターに手が伸びかけるが、何かを思い出したかのように手を停めた。 「いやいやいやいやいやいや、その手には引っ掛からないぞ! こないだので懲りたからな」 グレンは誘惑を振り切るかのように目を閉じ、首を横に激しく振るが、動揺しているのは誰の目にも明らかだった。 「あらそう? それは残念ねぇ」 シャーリーはそう言いながら、匆体付けた動作でモニターを消して席を立とうとする。 「待った、待ってくれ!」 グレンは慌ててシャーリーの腕を掴むと、ゲームを一時停止させる。 友達が難詰するような眼でグレンを見ると、肩をすくめて申し訳なさそうに言った。 「悪いが少し席を外してくれないか?」 シャーリーも、両手を合わせて頭を下げる。 「ごめんなさいね」 友達はグレンとシャーリーを交互に見比べると、肩をすくめて言った。 「データはセーブしといてくれよ」 友達が退出すると、グレンは周囲を見回してから、シャーリーに声を潜めて尋ねる。 「機密レベルはどれぐらいだ?」 グレンの問掛けに、シャーリーも声を潜めて答えた。 「あんたに洩らしたのがバレれば、あたしは軌道拘置所送りの後、どっかの管理外世界の無人惑星に永久追放されるレベル」 それを聞いたグレンの表情とリアクションは、一番欲しかった玩具を手に入れてはしゃぐ子供のそれだった。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/2350.html
autolink() N1/WE06-01 カード名:代わりの人形フェイト カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:4000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《クローン》? 【自】バトル中のこのカードがリバースした時、あなたは自分の山札の上から1枚を、クロック置場に置く。 母さんの捜し物・・・・・・ ジュエルシードは、ここにある・・・・・・ レアリティ:R illust.西又葵 デメリット付きでバニラよりサイズが大きくなるカード。 ツァーレンシュヴェスタン、夢への一歩 涼に継ぐ3枚目のサイズ4000。 前述の2枚とは違いデメリットは場に出た場合やアタック時には発生せず、そのためギミックを組む事なく安定したサイズが見込める。 更には「フェイト」?であるため使い魔アルフからの恩恵を受けられるため後列2つからの援護を受けると、 攻撃時には6000防御時には5000というレベル0帯の【ミハネム】さえもこえる高スペックを発揮する事が出来る。 反面デメリットも大きく、リバースした時には強制1点ダメージ。 終わりなき聖杯戦争バゼットに近いデメリットではあるが、あちらは2点なのに対しこちらは1点。 ただし「クロック置き場に置く」なのでダメージキャンセルが発生せず、そのカードがクライマックスであろうとダメージとなる。 序盤には不要なキャンセルでレベルが上がらない場合にメリットとなりうる内容ではあるが、 終盤となるとチャンプアタックする事自体が自分を追い込む事に繋がりかねないので要注意である。 とはいえ、条件はあくまで「リバースした時」。 「圧殺」や「除去」の場合はリバースを介しないためデメリットは無く、負けず嫌い伊織等の能力で生贄に捧げる場合にも影響はない。 終盤を考えるのならば手札交換効果のあるカードや手札アンコール持ちと一緒に運用すると良いだろう。 ・関連ページ 「フェイト」?
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1009.html
10日ぶりの更新である。というわけで文字通りやりたい放題やった結果が、今回のフェイトの大冒険である。手持ちのアイテムを少しづつ無くしていって、最後に何も持たなくなった時に、求めるものを得られる、という文法は、ロシアの童話では結構頻繁に使われていたと記憶してる。そういう意味では、今回のお話は書いていて非常に楽しかった。やはりオーソドックスなものはオーソドックスであるだけの事はある、ということであろう。 フェイトは基本的に食が細い。そして極めて幸運なことに、これまでの短い人生の中で飢えるという経験をしたことがなかったりする。さらに、一般庶民の食事は一日二食であるのが当たり前の世の中で、三度三度欠かすことなく食事をすることができていた、ということも理由としてあった。食べ物にがっつかなくて済む環境で育ったことが、彼女の口をきれいにしていたといえる。 「先輩が焼いてくれた焼き菓子だ。さあ、食べたまえ」 「はい。ありがとうございます」 そして何かというと、こうして食べ物を勧めてくれる人にこと欠かなかったせいで、食べることにさほど執着を持たずに済んだともいえた。 自習室で教科書に目を通すつもりでいたフェイトは、気がつけばノイナに勧められた薄焼き菓子を一枚とって端から少しづつかじっていた。一人机に座って数学の教科書をひろげようとしたところで、ノイナが声をかけてきたのだ。その教科書はすでに何回か目を通していたため、断る必要もないだろうと席を一緒にする申し出を受け入れたところ、さっそくお菓子を勧められたというわけである。 丁寧に挽かれた上質の小麦粉に、卵と砂糖と牛乳をふんだんに使ったとても美味しいお菓子であった。香り付けにナツメヤシの実から抽出した果汁を使っているのか、とても甘い。 基本的に外から食材を搬入しなくてはならないこの「学院」で、どうやって生ものである卵と牛乳を入手したのか、それがフェイトには不思議であった。もっとも、魔導を行使することをクラウディアから禁止されているため、その来歴を観測するようなことはしなかったが。 勧められた焼き菓子を一枚食べ終わると、フェイトはにこにこと微笑んでいるノイナにぺこりと頭を下げて感謝の気持ちを表した。 「ご馳走になりました」 「遠慮することはない。さあ、もう一枚ゆきたまえ」 「ありがとうございます。ですが、夕食が食べられなくなります」 「ははっ、君は本当に小食だなあ! まるで小鳥のようだ」 なにが嬉しいのか、ノイナは声をあげて笑う。フェイトにとって間食とは、誰かに勧められるか、お付き合いで食べるものであって、特に自分から食べたいと思ったことがなかった。なにしろここしばらくは第901大隊の営舎で暮らしていたのだ。軍隊式のこってりとしていて量のある食事を三度三度食べていたのである。それだけで十分お腹がくちくなる。「学院」の食事も、おかずが一品少ないくらいで、味はともかく量だけならば十分なものがあった。 フェイトと一緒に焼き菓子を口にしていたノイナが、嬉しそうに話を続けている。 「先輩の焼く菓子は、本当に美味しいなあ。うちから砂糖を取り寄せた甲斐があったというものだ」 「砂糖の精製をしているのですか?」 「そうさ。砂糖大根の栽培をやっていてね。いや、他ににも色々と手広くやっているのだが、あまり無心するのもはしたないからなあ」 領主というものは、できる限り自分の領地で採れたものでやってゆくのがたしなみなのだ。 自慢げにそう答えたノイナは、ぱちりと片目をつむってみせた。 そんな彼女のフェイトは目の前に山とある焼き菓子を見て、そういえば無名やクラウディアはこれを口にしたらどういう感想を述べるのだろう、と、興味を抱いた。確かにこの菓子は、ノイナが自慢するだけあって、大層美味しい。 二つ折りにされている袖のカフからハンケチを取り出したフェイトは、お菓子を何枚か包んで席を立った。 「ああ、ウェーラが焼いたお菓子だね。美味しかったよね」 「はい」 離れた席でアウレリアと一緒に勉強をしていたクラウディアのところにお菓子をもっていったフェイトは、これを焼いたのがクラウディアの友人であることを聞かされた。すでに二人とも同じものを口にしていたようで、ハンカチに包まれた焼き菓子を見て嬉しそうに微笑んでいる。 「フェイトさんは、どちらでそれを?」 「ノイナさんから頂きました」 「ああ、ウェーラと同室の子だね。そっか。さっそく友人ができたみたいでよかったよ」 「ケイロニウス御一門の方とうかがっていましたけれども、仲良くやっていらっしゃるようで良かったですね」 話は焼き菓子からノイナのことに移っていて、フェイトはそれにどう反応したらよいのか迷った。 皇統であるケイロニウス一門が「帝國」では大変に大きな存在であるということは、「学院」に入学してしばらく過ごすうちに実感として理解できた。なにしろレオニダス公爵家姫君のノイナと同じ学級なのである。学友達が畏れを抱いてか、あまり彼女に近づかないようにしているのを見れば、いやでも判るというものである。敬して遠ざけられるとはこのことであろう。そんな彼女だからこそ、特に畏れたり取り入ろうとしたりしないフェイトに、こうして好意を示すことができるのではないかと思ったのだ。 二人がすでにこの焼き菓子を口にしているのであれば、特にここにいる理由はなくなる。 次は無名に食べてもらおうと思って自習室を見回してみるが、どこにも彼女の姿は見えない。 無名はどこにいるのか、それをクラウディアに聞こうと視線を向けたところで、足音も高く近づいてくる少女がいた。 「クラウディア、無名を見なくて?」 「いや、見ていないけれど? 何かあった?」 「あの子! 人が勉強をみてあげるというのに、それを断るなんて!」 一期生学生代表のセレニアである。長く真っ直ぐの黒髪を後ろに流し、萌黄色の髪留めでとめて秀でた額をあらわにしている。何か気に入らないことでもあったのか、まなじりを決していて、肩をいからせていた。普段はつとめて優雅に振舞っている彼女が、こうも感情を激発させている姿を見せるのは、それはそれで珍しい。 「そっか。それで?」 「私が、復習を見てあげるから、と言ったらなんて返事したと思って? 「勉強は嫌いだ。だから授業中だけで済ませるようにしている。いい」ですって!! まったく、次の試験で上位に入らなかったらただでは済まさなくてよ」 「あはは。無名らしいや」 「笑い事ではなくってよ!」 確かに無名らしい、と、フェイトも思った。 ナタリアに「学院」受験のための勉強を見てもらっている時も、はっきりと興味なさげな様子であったし、そもそも自習室で教科書を開いているところを見たことがない。そういえば、彼女は二言目には、あいつがいるから入学するんだ、と、口にしていたか。 フェイトの記憶では、無名はむしろ本はよく読んでいたようであるが、自分の興味の向かないことにはまったく見向きもしないのが彼女らしいといえばいえた。 腹立たしさに頬を上気させているセレニアに、フェイトは両手で包みを開いたハンカチの上の焼き菓子を差し出した。 「いかがです?」 「あら、ウェーラの焼いたお菓子ね。ありがとう。でも私も頂いているの。気持ちだけ受け取っておくわ」 一瞬前の激発が嘘の様に落ち着いた様子になって、セレニアはフェイトに向かって微笑んだ。 「取り乱したところを見せてしまってごめんなさいね。ええ、もう大丈夫よ。それは貴女がお食べなさい」 「はい」 「本当にあの子、勉強が終わったらこれを食べさせてあげようと思っていたのに。今日はお預けね」 まったくもう。憤懣やるかたない、という口調でそう言葉にしたセレニアに向かって、ぺこりと頭を下げたフェイトは、無名を探すべくその場を離れた。 無名は基本的に人見知りする上、気分を害するとすぐ殺気立つ。そんな彼女がのんびりとした時間を過ごすには、誰か人の気配のしないところが必要である。「学院」の敷地は広いが、かといって人の気配のしないところ、というのが難しいところであろう。何がしかの必要があってのこの広い敷地なのであり、ゆえに何がしか人の気配があるものなのだから。 フェイトは、脳内に「学院」の敷地を地図として展開し、そのどこならば無名のいる可能性が高いか考察した。 寄宿舎、ということはまずない。この学院で最も他人の気配が濃く、彼女にとって最も居心地が悪い建物であるから。 校舎、これもない。今の時間帯は、課外活動のために多数の学生がおり、人目を引きたくない彼女が近づく可能性は限りなく低い。 講義棟、図書館、食堂、職員棟、礼拝堂、以上どこも同様の理由で除外。 倉庫棟。ここの近辺ならば、基本的に人の気配はしないはず。そこは今すぐ必要ではないものを格納しておくための場所であって、常に人がいるわけではない。この近辺ならば、人の気配のない場所があるだろう。 フェイトは、入学以来あちこち歩き回って自分の目で確かめて廻った経験をいかして、倉庫棟に向けて歩き出した。 「「「眠りは甘い砂糖菓子、もろくも崩れて再びの地獄♪」」」 フェイトが倉庫棟の近くにまで足を運んだところ、透き通るような美しい声色で、だがコブシの効いた腹の底から出される腰の据わった歌声が聞こえてきた。 「「「ゆらめく影は、よみがえる悪夢♪」」」 フェイトの記憶であれば、この歌は兵隊歌謡のはず。少なくとも、修道会系の学校で女生徒が歌っているはずのない代物である。 誰が歌っているのだろう。存在するはずの無いものが現実にはここに在る。その事実に興味が沸いたフェイトは、そっと気配を忍ばせて歌声のする方に近づいていった。 「「「炎に焼かれ煙にむせて、ここで生きるがさだめであれば、せめて望みはぎらつく孤独♪」」」 歌っていたのは、食堂でフェイトの右隣に座しているダリアという二期生学生代表の娘と、最近になってその隣で食事をするようになったルスカシアとアルブロシアの三人であった。 歌のリードをとっているのはダリアで、それに音階を合わせてルスカシアとアルブロシアが歌っている。三人の中ではダリアが最も歌が上手で声量も音感も抜群であった。アルブロシアも声量で敵わず、腹ではなく喉で歌っているところがあったが、音感は決して悪くはない。最も下手なのがルスカシアで、大声で叫ぶようにして声を出している上、音階など無視して調子っぱずれで勢いのままに歌っていた。 腕を振るい、全身を揺らして歌う様は、礼拝堂で練習している聖歌隊の学生らとは正反対の様子であったが、それでも歌うことの楽しさを三人揃って全身をつかって表現していた。 「はぁはぁ、いやー やっぱ人数いたほうが気持ちいいじゃん。な、次「さよなら兄弟」いこうぜ、ダリア」 「待てってばよ。少し休ませろっての。あー 水、水。っと、アルブロシアも飲め」 「うん。ありがとう」 一通り歌い終わってから水筒の水を回し飲みし始めた三人の姿を見て、フェイトはここにも無名はいなさそうだと見当をつけ、くるりと背を向けて立ち去ろうとした。 だが、なんの偶然か、ルスカシアがフェイトの後ろ姿を見つけて声をあげた。 「おぉうっ!! ふぇいとだ、ふぇいと!!」 「は? 誰だよ、そいつ?」 「お前の左隣に座ってる子だってば! おーい、ふぇいとぉー 一緒に歌おうぜー」 「おい、待て、なんでそぅいう話になるんだよ、お前はさぁッ!!」 目ざとくフェイトを見つけたルスカシアが、猛然とダッシュをかけ、フェイトに向かって飛びつく。 それを避けて逃げるくらいフェイトにとっては特に難しいことではなかったが、しかし、魔法を行使することを禁じられているのと、ここで逃げ出しても食堂であれこれ詮索されることが明白であるため、この場はあえてルスカシアのなすがままにさせることにした。 「そぉいっ!!」 そのままフェイトに跳びついたルスカシアは、ぎゅっと抱きしめると、少女の金髪の頭にほほを摺り寄せ、すんすんと匂いをかぐ。 「うおっ! すげぇー ぷにぷにでさらさらで最高ぉーっ!!」 「なにオヤジ臭ぇこと抜かしてんだ、お前はよッ。ほれ、こいつ驚いているじゃねぇか。離れろってばッ」 「……ごめんなさい。大丈夫?」 「はい」 うっとりとした表情でフェイトの全身をぺたぺた触り始めたルスカシアをダリアがひっぺがすと、アルブロシアが腰をかがめてフェイトの顔をのぞきこんだ。 背が高く大人びたアルブロシアが気遣わしげな表情をしているのを見て、フェイトは、ぺこりと頭を下げた。 「お邪魔をしたようで、ごめんなさい」 「ううん、平気だよ。こちらこそごめんね、驚いたでしょう?」 「いえ、大丈夫です」 跳びつかれた時に、よろけて倒れそうになったものの、半身になり腰を落として構えておいたおかげで転がらずに済んだ。そして、ぎゅっと抱きしめられたり、頬をすりよせられたりするのは、ナタリアを相手にしていることもあって特段驚くようなことでもない。 だが、そんなフェイトの側の事情を知るよしもないアルブロシアは、そっと軍用水筒を差し出した。 「回し飲みでごめんね。湯冷ましだけれども飲む?」 「頂きます。ありがとうございます」 手渡された水筒を両手を持ち上げて、一口水を含む。歩き回っていて身体が水分を欲していたのであろう、その湯冷ましは大層美味しかった。 「いかがですか?」 湯冷ましのお礼のつもりで、ハンカチで包んでいた焼き菓子をアルブロシアに向かって差し出す。 「おっ、もーらいー ……うまっ!!」 「おめーって奴はッ、少しは考えろってばよ。……おろ、本当に美味めぇ」 「うん、これ美味しいよ」 フェイトが差し出した焼き菓子を、横からルスカシアが一枚さらって口に放り込む。それをたしなめたダリアも、フェイトがハンカチを引っ込める様子が無いのを見て自分も一枚とって一口かじり、最後にアルブロシアが手をつけた。 三人が三人そろって焼き菓子が美味しいことに驚いている様子に、フェイトは、三人にも食べてもらって良かったと思った。 「よしっ、もう一枚~」 「おめぇは少し遠慮しろッ!」 さらにもう一枚と手を出したルスカシアの手の平を、ぺしっと叩いてひっこめさせたダリアが、フェイトに向き直って頭を下げた。 「美味しいものを、ありがとうございました。改めて友人の無礼をお詫びします。申し訳ありませんでした」 「いいえ。問題ありません」 「ごめんなー フェイトって、あんまりに可愛いからさー 一回抱き心地を確かめてみたかったんだー」 「それもどうかと思うよ」 てへへー という表情で笑ってごまかそうとするルスカシアを、アルブロシアが冷めた目で見、ダリアがやれやれという表情になった。 そんな三人の仲の近しさに、フェイトは色々なことを不思議に思った。見たところ、生まれも育ちも性格も随分と違う様子の三人であるのに、こうして仲良く歌を唄って楽しんでいる。その様な関係というものは、少女はこれまで見た事がなかった。 「そーいや、ダリアってば、せっかく隣なのに全然フェイトと話さないのな」 「たりめぇだろうが。そもそもきっかけが無かったんだからよ。あと、食事時にぺちゃくちゃおしゃべりすんのは無作法なんだよ。お前もちっとは反省しろ」 「いやー でも食事って、にぎやかな方が楽しいじゃん」 「生憎と世の中には、礼儀作法っていうもんがあんだよ。お前は少し勉強しろ」 ぎゃあぎゃあと言い合うダリアとルスカシアの二人を、じっと見つめているフェイトに、困ったな、という表情でアルブロシアが視線を向けてきている。 「お、そーだ。お菓子のお礼なー」 いい加減ダリアとじゃれあうのに飽きたのか、ルスカシアはフェイトに近づくと、自分の頭の両脇で癖の強い茶髪をまとめていた黒いリボンをほどいて、フェイトの髪をまとめ始めた。 さすがにルスカシアのこの行動は予測できなかったフェイトは、目をなんどもぱちくりとまばたきしつつ、彼女のやりたいようにさせるしかなかった。 「……うおっ、可愛ぇっ!!」 「うわ……、確かにこれは反則だぜ……」 「うん……」 両耳の少し後ろあたりの上の方で黒いリボンでまとめられた金髪が肩から後ろに二筋流れ、「学院」の黒い制服と白いケープ付きカラーのせいでよく映えている。フェイトの瞳はどこまでも澄んだ真紅の色合いで、ま白い肌と透き通るような金髪の中で一点の輝きとなって強い印象を他人にあたえた。 だが、そうした自分の容姿に全く興味がないフェイトにとっては、あまりのことに絶句した三人の態度は理解の外であった。ただリボンを譲ってもらったという事実だけが彼女にとっては意識するべきことであって、少女はルスカシアの前に歩を進めると、ぺこりとおじぎをした。 「ありがとうございました」 「お、おう。……皆には黙っとく」 頭を下げたフェイトの耳元に唇を寄せたルスカシアが、そう一言つぶやいた意味を、少女は正しく理解した。 なにしろ彼女はフェイトの髪をまとめるために頭に触れているのだ。少女の側頭部に本来は生えているべきものが切り落とされた跡にも触れている。だが、その事実をおくびにも出さないだけの性根がルスカシアにはあった。彼女が黙っている、と口にした以上、本当に墓場まで黙ってもってゆくつもりなのであろう。それだけの覚悟が、彼女の短い一言の中に感じ取れた。 だからフェイトは、もう一度深く腰を折って、ルスカシアのその覚悟に礼を述べた。 ルスカシア達三人と別れたフェイトは、一度寄宿舎の方に戻ってみることにした。人がいないはずのところにも、ああして人がいる以上、無名が人のいないところにいるとは考えられなくなったからである。人の気配が感じられても、実際には人が訪れないところ。そういうところを探してみることにしたのだ。 そうして建物へ向かって林の中を歩いていると、不意の開けた場所に出た。そこは人の手が入っていて、小さいながらもよく手入れされた菜園になっている。諸々の作物のみならず、各種の薬草までも植えられていることに興味をもったフェイトは、立ち止まって観察を始めた。 「フェイト学生じゃね」 その老人の気配に声をかけられるまで気がつけず、フェイトは、はっとして声の方向に向き直った。 そこには、粗織りの粗末な修道服に麦わら帽子をかぶった老修道僧が、農機具を手に立っていた。真っ白い髭を綺麗に整え、すっくと真っ直ぐに背筋を伸ばしている姿は、とても見た目通りの老人には思え無い。さらに老人が声をかけてきたのが、フェイトの間合いのすぐ外側からということが彼女の注意を喚起した。 「そこで立っているのもなんじゃろう。こちらに来て座りなさい」 「はい。学院長殿」 彼が入学式の最後に色々な講話をしたことを覚えている。エウリュネス・クラウディウス・ネロ導師。かつて帝國元帥にして帝國方伯であり、副帝レイヒルフトにも匹敵するとも噂された軍事的才能の持ち主。今では出家し、この「学院」の学院長として「帝國」の次を担うべき若者らを育てている教育者にして聖職者。 だが、フェイトの目の前に立っている老人は、奥深さこそ感じさせるものの、ただ姿勢の良い好々爺にしか見えない。 エウリュネス導師にうながされるままに菜園の外れに据えられている丸太の長椅子に腰を下ろした。 「どうやら馴染めている様子じゃな。善き事よ」 「ありがとうございます」 「探し人は見つからぬ様子じゃが、案外近くにおるかもしれんよ。人は往々にして足元は見えぬもの故にの」 「!?」 フェイトが無名を探していることは、この老人は知らぬはずである。傍から見れば、ただ林の中をさ迷っていたようにしか見えないはず。 「ふむ、驚いた様子じゃな。何、歩いている人を見る時、まず足元を見てみなさい。歩き方と靴は、嘘をつかぬからの」 「よろしいでしょうか、学院長殿」 「なにかの?」 「私の足元から何を知り得たのでしょうか?」 フェイトは、自分の足元を見、学校指定の短靴と長靴下をはいていることを確認し、そこからこの老人が何を知り得たのか理解できずにいた。 「その事か。靴に泥と裏手の倉庫の辺りの樹の葉が付着しておるな、そして手に包みを持ち、疲れておるのか膝があまり上がっておらなんだ。その上で林の中を真っ直ぐに建物へ向けて歩き来た。今の時間帯は、学生は寄宿舎か校舎におるはずじゃからの。そこから倉庫の方に歩いてゆき、そしてまたこうして真っ直ぐ戻ってきたわけじゃ。何か誰かを探しておったのじゃろう、とは、まあそう思ったわけじゃよ」 「了解いたしました」 「ついでに言えばの、そのまとめてある髪も、左右で長さが違うておる。その黒いリボンを貰って、その場で髪をまとめてみた、そんなところかの」 「……はい」 本当によく見ている。多分今口にした以上の事もフェイトのあり方から見てとっているのであろう。これが副帝レイヒルフトに特に請われて「学院」を任されることになった男か。少女は内心、この老人にどういう態度をとればよいのか判らず、色々な可能性を考察しようとした。 「難しく考える必要はないんじゃよ。ただ見たものを見た通りに見る。感じたもの感じた通りに感じる。意味を付けるのはその後のこと。そう師から教わらなんだかの? 事物はただその場に在るもので、それの意味は、意味をつける者の数ほどにも種類がある故にな」 その言葉はフェイトにとっては馴染みのある内容であった。そもそもが魔導とは、観測者と観測対象との相互性で成立している。そして両者の存在の意味は、その時その場で相互の関係性によって規定されるものであるのだ。 「ただ歩いてみるだけでも、人は、見るべき様に見れば、未知に出会うことができる。故に未知を既知とするために人は歩いてゆくものじゃよ。そなたは今日は多くの未知と出会い、受け入れた様子じゃな。善き事かな。善き事かな」 皺深い顔に穏やかな微笑みを浮かべてそう語った老人に、フェイトは、ただうなずいて返すしかできなかった。この老修道士がフェイトの事情について何も知らぬわけがない。むしろ全ての事情を知った上で学院に受け入れたのであろう。魔族である自分を、そうと知った上で受け入れてくれる人がここには何人もいる。その事実にフェイトは知らず知らずのうちに感謝の気持ちを抱いていた。 「……よろしければ、いかがでしょう?」 「ほう。これは美味しそうなお菓子じゃな。それでは、それをお茶請けにするとしようかの。ついてきなさい」 丸太から立ち上がったエウリュネス導師の背中にぺこりとお辞儀したフェイトは、そのまま老人の後ろをついていった。 エウリュネス導師の元でお茶を喫し、お礼を述べてからその場を去ったフェイトは、ふと思い立って礼拝堂の方へと歩いていった。老修道士の話は含蓄に富んでいて、色々と考察してみる価値のあるものであった。その充実した時間の余韻を感じたままでいたくて、あえて寄宿舎の方には戻らなかったのである。 そうして歩いていると、礼拝堂と校舎の間の人気の無い敷地で、一人木刀を振るっている少年がいた。いや、この「学院」の女生徒の制服を着用している以上、少年と呼ぶのは相応しくはない。だが、少年としか形容しようのない雰囲気を身にまとった者であった。 彼が新しく第901大隊の第766教育隊に配属された学生の一人で、モリフォリウスと呼ばれていることをフェイトは思い出した。 「やあ。君はフェイトだね。僕はモリフォリウス」 「ごきげんよう」 フェイトの視線を感じたのか、木刀を振るうのを止め、真っ直ぐの姿勢をとり右手の人差し指で天を指しつつ左手を組み人差し指と小指を立て、モリフォリウスはそう名乗った。 そんなモリフォリウスにフェイトは軽く会釈して挨拶した。 「礼拝堂に何か用かな。もう誰もいないけれどね」 「いえ」 別に礼拝堂に用があるわけではない。ただ無名を探して歩き回るのは止めにしただけのことである。歩くために歩いている、というのが今のフェイトの気持ちに近いところであろうか。だが、それを口にするつもりはなかった。 「誰かを探しているなら自習室にゆくといい。何かを探してるなら舎監のところにゆくといい。物事には、かく為るように為る「道理」というものがあるのだから」 「はい」 このモリフォリウスが何を考えているのか、フェイトには別の意味で判らなかった。多分何も考えていないのではないか、というのが正解に近いのではないか、とも思えてくる。 そんなフェイトの困ったような雰囲気を察したのか、判っていないのか、モリフォリウスは話題を変えた。 「是非教えて欲しいんだが、その手にしているハンカチの中身はなんだい?」 「先輩が焼いて下さったお菓子です」 「そうか。そういう行為もここでは許されているのか。修道会の寄宿舎といいつつ、なんという自由さ。いいね、気に入った」 「……………」 「そういうわけだ。僕にも一つ食させて欲しい」 「駄目です」 なにしろ色々な人に配って歩いたせいで、焼き菓子は残り一つだけになっている。最後の一つは無名の分なのだ。ここでモリフォリウスに食べさせるわけにはいかない。 「……フェイト。君は人が何のために生きているか知っているかい?」 「いえ」 「それはッ! 「欲する物を手に入れること」!! ひと言で言うならッ、人が生きるということは「ただそれだけ」なのさ!!」 すっと体捌きでフェイトの前に移動したモリフォリウスが、くるりとその場でひと回転し、少女の右手に移動する。 フェイトが左手の方に身体を移した時には、すでにハンカチはモリフォリウスの手に移っていた。 「うおォン! 美味い、美味いぞーッッ!! フェイトぉおおッ!!」 ハンカチに包まれた最後の焼き菓子を口に放り込んだモリフォリウスが、全身を使って喜びを表している。さしものフェイトであっても、彼のその姿にはいらっとくるものがあった。次の訓練日には、ナタリアに頼んで是非ともモリフォリウスと模擬戦をすることを心の中で誓う。 わずかに目を細めて無表情なまま、内心ではそれなりに不愉快な感情を覚えていたフェイトに、少し離れたところから声がかけられた。 「よう。どうしたフェイト」 「無名さん」 「機嫌、悪そうだな」 礼拝堂の影から現れた無名が、軽く右手を上げてすたすたとフェイトの方に向けて歩いてくる。学院長の言う通り、ごく近いところにいた。その事に内心では舌を巻きつつ、フェイトは無名に向けてぺこりとお辞儀をした。 「髪、まとめたのか。似合っているぜ」 「ありがとうございます」 ふっ、と目を細めて笑った無名に、フェイトはもう一度ぺこりとお辞儀をした。普段、人の容姿について何も口にしない無名が褒めるのだ。きっととても良く似合っているに違いない。 「で、何があったんだ」 「焼き菓子を頂きました」 「そうか」 「無名さんにも食べていただくつもりでしたが、無くなってしまいました」 「そうか」 「最後の一つを彼が食べました」 「そうか」 次の瞬間、無名はまるで「転移」したかの様にモリフォリウスの前に立っていて、軽く左肘を上げて身体を半回転させていた後であった。 そして、モリフォリウスはすとんと膝から崩れ落ち、その場に尻餅をつくようにして地面に座りこむと、そのまま仰向けに倒れた。その無名の動きを、フェイトは全く目で追う事ができないでいた。 「どうやったのですか?」 「肘をおとがいに当てた。しばらく寝ているだろ」 「はい」 無名にモリフォリウスの行為について伝えたのは、単に事実を知らせるべきだと思ったのが理由である。まさか即座に意識を刈り取るとは、さすがにここ数ヶ月一緒に営舎で暮らしていたフェイトにも読めなかった。クラウディアが彼女のことであれこれ心配するのが何故か、今この瞬間はっきりと心と身体で理解できた。確かに彼女は危険だ。ささいなきっかけで何をしでかすか判らない。 「なあ、本当にもう無いのか?」 「セレニア先輩が持っている可能性が高いです」 「本当かよ。まいったな」 そんな無名であっても、セレニアは苦手とみえる。眉をハの字にして、どうしたものかと思案顔で困っている。 だからフェイトは、初期の目的を達成するべく、無名に提案してみることにした。 「私と一緒に、お菓子を食べさせてもらえないか、頼んでみましょう」 セレニアは、フェイトのお願いに抗うことはできなかった。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3524.html
その日、機動六課のメンバーはホテルアグスタに展開していた。 もちろんパーティーを開くためではない。 今日開かれるオークションで レリックが出品される可能性があるという情報を得たからである。 前回の山岳列車襲撃事件を振り返っても この情報を掴んだスカリエッティが動くことはほぼ確実だろう。 彼の動きに備えるため、機動六課はホテルの警備任務についていた。 「ヴィータ、いい加減気持ちを切り替えろ。 そんな状態を続けていてはフォワードの4人にも示しがつかんぞ」 作戦開始前から仏頂面を崩さないヴィータを ウンザリした顔でシグナムが諭した。 時間は作戦の前日に遡る。 山岳列車襲撃事件におけるジルグの単独行動は 当然問題となっていた。 わざわざ演技をしてまで味方を欺いた上での事である。 とはいえフォワード陣のジルグに対する感情は そこまで悪化した訳ではない。 ティアナなどはシャーリー同様「この人はこういう人だから」 という認識で既に諦めの境地に至っており、 スバルは自分達があれだけ苦戦した相手をあっさり退けたジルグに 素直に尊敬の眼差しを向けるようになっていた。 エリオとキャロはやはり「どうせなら初めから自分達と行動してくれれば…」 という感情もあるにはあったが、演技の後とはいえ、 飛行魔法も使えないのにあの高空から移動中の列車の開いた穴に向かって強襲を仕掛けた事は 作戦前に抱いた侮蔑の感情を払拭して余りあるものがあった。 だが隊長陣にとっては『それはそれ、これはこれ』である。 一応現場における直属の上司に相当するなのはなどは 作戦直後とは打って変わって、どのようにジルグと接するべきか悩んでいたし はやては今後の作戦においてジルグをどう扱うかが頭痛の種となっていた。 その状況を本人達以上に苦々しく思っていたのははやての配下であるヴォルケンリッター達 特に現場での暴れっぷりを直接見ていたリインフォースに変わって いまや反ジルグの急先鋒となっていたヴィータである。 もともとヴィータは過去の戦いや事件を通じて、なのはとは特に仲が良い。 そして他のヴォルケンリッター同様、はやてには絶対の忠誠を誓っている。 その二人を自分勝手な行動で振り回して悩ませているジルグは 陸士第108部隊の味方撃ち事件の事を差し引いても許せるものではなかった。 そしてその感情が、ホテルアグスタにおける任務の前日に ついに爆発したのであった。 「あぁ? なんだって?」 ヴィータが険のこもった眼差しをジルグに向けた。 現在は訓練時間中である。 これまでと同様、フォワード陣とは別メニューで 訓練とエルテーミスの調整を行っていたジルグの前にヴィータが姿を現したのである。 最初、ヴィータが姿を現してもジルグは全く意に介せず訓練を続行していた。 『無視された』と感じたヴィータがジルグを怒鳴り声で呼びつけると 初めて存在に気づいたかのようにヴィータの元に歩みを進めるジルグ。 「おいジルグ、前からそうだが上司に対する態度がなってねーな?」 「…………」 普通ならヴィータはこんな事は言わないだろう。 彼女は本来快活明朗な性格だ。 だが今は目の前の男に対する嫌悪感と、そこから派生したイラつきで冷静さを欠いていた。 いつものようにすました顔を崩さないジルグに、ヴィータのイライラはさらに募る。 「毎日毎日デバイスの調整だけじゃ腕もなまるだろ? あたしが稽古をつけてやるよ」 ヴィータがここに来た目的は単純だ。 体育会系にはありがちのかわいがりである。 『早めにこの男の鼻っ柱を折っておかないと、この先もどんどん増長して止められなくなる』 一応、ヴィータなりに六課の今後を考えての行動であり ジルグの元に向かったヴィータを、他のヴォルケンリッターは止めずに黙認した。 だが─── 「お断りします」 この一言がヴィータの機嫌をさらに損ねることになったのである。 「なんだ、ビビってんのか?」 ヴィータの挑発にも、ジルグは眉一つ動かさない。 「まだこのエルテーミスは、分隊長殿を相手に出来るほど使いこなせてはいませんので」 台詞だけなら殊勝である。 だが、笑みすら浮かべた表情で言っても何の説得力もない。 ヴィータからしてみれば『眼中にない』とでも言われていると勘違いしてもおかしくない態度であった。 ジルグ本人としては単純にめんどくさかったから、というのが最初の答えの理由である。 実際のところ、エルテーミスはまだまだ様々な機動を取ることが可能と思っていたし その為の訓練をしているところに、わざわざ分隊長殿がちょっかいを仕掛けてきたのは 甚だ迷惑なことであった。 それに、ジルグは自身の『戦闘技術』に自負を持ってはいたが 『まともに戦う』事になった場合、 なのはやフェイトはもちろん、ヴォルケンリッターにも自身の『戦闘能力』自体は劣ると考えている。 魔力ランクを見れば一目瞭然だがヴィータはAAA+であり、ジルグはA+だ。 隊長陣は普段魔力にリミッターをかけられているとはいえ この世界の戦い方におけるキャリアは、つい最近この世界に現れたジルグの比ではないし シンプルな魔力合戦となった場合、はじめからジルグに勝ち目はない。 だから、実際に敵対した場合ならともかく 今は新しい玩具である『エルテーミス』の調整を楽しんでいるジルグからすれば ヴィータの申し込みは単なる面倒事でしかなかったのだ。 だが、二言目の台詞と自身の態度がヴィータに対する挑発となり、 結果逆上させる事をわかった上で言っているあたり ジルグは自身が認めるように『ガキ』なのだった。 「……これは分隊長命令だ、あたしと勝負しろ。ジルグ」 「了解」 動揺する雰囲気など微塵も見せず、平然と了承するジルグ。 「場所を移すぞ、ついてこい」 そう言ってヴィータが向かった先は…… 「ヴィータちゃん!?」 「よう、なのは。新人どもの訓練も一段落したみてーだな」 突然現れたヴィータとジルグに戸惑った声をあげるなのは。 「う、うん。今終わった所だけどどうしたの? ジルグさんまで連れて……」 不穏な空気を察したのか、なのはの顔に不安の影がよぎる。 「これからあたしとジルグで模擬戦をする。 ジルグもデバイスの調整ばかりじゃ腕もなまるだろうし、新人共にゃいい参考になるだろ。 なのはは立会いと訓練の開始役をしてくれ」 ヴィータの言葉になのははその意図を察し止めようとする。 「だ、だめだよ! ジルグさんのデバイスはまだ調整中なんだし さっきまで訓練してたんでしょ? そんな状態でヴィータちゃんと模擬戦なんて……!」 なのはの抗議は予想のうえだ。 だからこそヴィータは先にジルグの元へ向かったのだ。 「ジルグの方は了承してるぜ」 上官命令として引っ張ってきたのはヴィータだ、ジルグがそれを言えば模擬戦の話は消滅する。 ヴィータはそこを危惧したがジルグは 「そういうわけなのでよろしく」 とあっさりと承諾した。 なのはは未だ渋っているが、本人達はすでに開始位置に歩みを進めている。 フォワード陣も、初対面以外でジルグの戦いを直接見るのは初めてだ。 しかもその相手は、自分達もその力を良く知っているヴィータである。 興味津々の面持ちで開始の合図を待っている。 こうなれば後はなるようにしかならない。 なのはは観念し、せめてジルグが軽傷で終わるように祈りながら開始の合図を下した。 「じゃあ、二人とも用意はいいね?……はじめ!!」 まずはセオリーどおり、ジルグは後方に下がり距離をとりながらライフルをヴィータに向けて連射する。 ヴィータはそれを最低限の動きでかわし、 かわしきれない弾はグラーフアイゼンを盾にして防ぎながら魔方陣を展開する 「シュヴァルベフリーゲン!」 ヴィータの周囲にいくつもの大型の魔力弾が形成され グラーフアイゼンがそれをジルグに向かって打ち込む。 そしてヴィータもジルグへの距離を詰めるべく滑空する。 「……!」 自分に向かって来る魔力弾を冷静にライフルで迎撃するジルグ。 単体の破壊力ではジルグの魔力弾に勝るであろう大型魔力弾の中央を正確に穿つことで魔力を四散させ そしてそのまま向かってくるヴィータにも魔力弾を斉射する。 それを防ぎながらジルグとの距離を詰めてゆくヴィータ。 「さすがに狙いが正確だな、だけど…… 狙いが正確すぎるってことは逆を言えば来る位置が予測できるってことさ!!」 そう叫ぶとヴィータはさらに距離をつめ、 「いくぜアイゼン!」 『Raketenform』 空中に飛び上がり、ジルグに向かって魔力による加速を増したグラーフアイゼンを振り下ろす。 ヴィータの18番であるラケーテンハンマーが唸りをあげて 後方へステップして逃れようとするジルグに襲い掛かる。 「!?」 だが完全に捕らえたと思っていた一撃は空を切る。 ヴィータの一撃が当たる直前に、4箇所の姿勢制御デバイスを全開で前方に出力 瞬間的に後方へ移動することで正に間一髪で必殺の一撃をかわしたのだ。 そのまま間をおかずにヴィータへライフルの攻撃を浴びせるジルグ 「チッ!」 だがヴィータも至近距離から放たれる高威力の魔力弾に対して 怯まず真っ向からプロテクションを絡めたグラーフアイゼンで受け止め、さらに距離を詰める。 確かにジルグの射手としての技量は高い。 だが先程ヴィータも言ったように『狙いが正確すぎる』故に 来るとわかっていればヴィータほどの戦士であるなら 直線移動しかしない魔力弾を防ぐこと自体はそこまで難しいものではない。 誘導弾で後ろから狙われる可能性もあるが 逆を言えばわざと狙いを外した時点でその意図は看破できる。 加えてこの距離はヴィータの間合いである。 銃身の長いロングライフルは近距離においては取り回しが難しく、小回りが利かない。 事実、近距離戦を挑んでからジルグがライフルを発射する回数は激減していた。 ヘタに撃とうとすれば、ジルグ自身には当たらなくとも グラーフアイゼンの重い一撃が銃身の長いロングライフルを破壊するだろう。 そしてジルグは後方に下がって間合いを取ろうとするが、 跳躍補正デバイスは背面にあり後退には使用できない。 後方に下がるには姿勢制御デバイスだけしか使えないのだ。 ギリギリでヴィータの攻撃をかわし続けてはいるものの、完全にジリ貧状態であった。 何度目の事か、僅かに間合いをとったジルグがライフルを構えヴィータに魔力弾を発射する。 だが、その弾道を見たヴィータは勝利を確信した。 狙いはヴィータを外れている、弾道も今までに比べれば僅かに遅い。 焦れたジルグがついに誘導弾を放ったのだ。 これまでは高威力の魔力弾に対し、グラーフアイゼンを盾にした上で プロテクションを発動させる必要があった。 そうでなければ、いかにグラーフアイゼンが頑丈といえどもあの攻撃を耐え切ることは出来ない。 だが、後方から自分を狙うための誘導弾であれば 今この瞬間のプロテクションの発動や防御の動作は不要である。 誘導弾といえどもあの弾速ではヴィータを通り過ぎた後 彼女の背中に着弾するまでには十分すぎるほどの時間がある。 これまで届かなかった『後一歩』の間合いに踏み込める。 ヴィータは一気に間合いを詰め、横薙ぎで仕留めようとグラーフアイゼンを振りかぶった。 「なっ!?」 驚きの声をあげたのはヴィータの方だった。 ヴィータが踏み込むと同時に、ジルグは跳躍補正デバイスを出力させて 一気にヴィータへの間合いを詰めたのだ。 ヴィータの眼前にしてやったりという表情をしたジルグが迫る。 だが、ヴィータとて歴戦の猛者であるヴォルケンリッターの一人だ。 ヴィータはあえてそこで止まらずに、無理やりラケーテンハンマーを振り切ってみせた。 ジルグのいる位置はグラーフアイゼンの柄の部分である。 本来の威力を与えることは当然出来ない。 だが、それでも当たりさえすればジルグに対しては十分なダメージを与える事が出来る。 そして何より二人の距離は近すぎてライフルは使えない。 「でえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」 その場にいた誰もがヴィータの勝利が決まったと思っただろう。 だが─── 「あ………?」 グラーフアイゼンを振り切ったヴィータの顔面に、ジルグのライフルが突きつけられていた。 フォワード陣は何が起こったのか理解できず、一様に呆けた表情を見せている。 ジルグが何を行ったかを理解しえたのは、 なのはと模擬戦をモニターしていたシグナムとザフィーラだけであった。 「今の模擬戦、どう見る?」 シグナムに尋ねるザフィーラ。 「半分はヴィータの油断だ。だが──」 とシグナムは続ける。 「『普通に戦って』あの男に勝つのは私でも難しいだろうな」 そう言ってシグナムはモニター室を出て行った。 その瞬間に何が起こったのか? 自分に迫るグラーフアイゼンの柄に対し ジルグは姿勢制御デバイスと跳躍補正デバイスの全てを動作させ 身体をデバイスの複雑な出力方向制御のみに任せて 体勢を自身に向かってくるグラーフアイゼンの柄を軸に回るように変化させた。 そして、急激な速度でまるで棒高跳びの如く、柄をなめるようにかわしたのだ。 そのままジルグは左手を地面につけ、逆立ちの状態から右足の姿勢制御デバイスを全開で出力させ ヴィータの脳天に向けて凄まじい速度の蹴りを降らせた。 かろうじて頭への直撃を避けたが、蹴りはヴィータの右肩に叩き込まれる。 思わず片膝をついたヴィータの目の前には 逆立ちでヴィータの肩に蹴りを叩き込んだまま左手一本で自分の身体を支え 右手のライフルを眼前に突きつけているジルグがいた。 誘導弾は跳んでこない、という事はあの魔力弾は誘導弾に見せかけたただの射撃 つまりここに至るまでのプロセスは全て…… 「……ハッ! そ、そこまで!模擬戦終了!!」 我に返ったなのはが慌てて模擬戦の終了を告げる。 後一歩遅かったらジルグがヴィータにライフルを発射していたかもしれない ギリギリのタイミングであった。 「さて、訓練は終了らしいのでこれで失礼いたします。ヴィータ分隊長殿」 軽やかにヴィータの肩に乗せられた足を下ろして立ち上がったジルグは 勝ち誇るでもなくヴィータにその一言を投げかけ、さっさと訓練場を出て行った。 あっけに取られたままのフォワード陣をよそに、なのはがヴィータに近づき声をかける。 「ヴィータちゃん………」 ヴィータはなのはのほうをチラリと見ると再び地面に視線を戻し 「……ごめんななのは。悪ぃけどしばらく一人にしてくれ……」 肩が小刻みに震えている。 相当に悔しいのだろう、なのははそれ以上何も言わずに フォワード陣に声をかけて彼らと共に訓練場から出て行った。 「チクショウ……確かに強ぇ……だけど、あたしは絶対にお前の事を認めないからな……」 心の奥底から搾り出す様なヴィータの声は、訓練場の静寂と共に消えてゆくのだった。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1016.html
というわけで、何故かフェイトが覚醒するの回。本来彼女は受身キャラのはずが、自分からクラウディアや無名にアプローチをしかけたり、キャラが勝手に動くというのはこういうことか、と、いう感じである。もっとも、口調からして元のリリなののフェイトとは違っているわけであり、このフェイトはあくまで「帝國」SSのフェイトということであると再確認したわけだが。 ここしばらくフェイトは、勉強する時には自室に戻ってきてから帳面をひらくようにしている。自習室で勉強しようとしても、色々な人間が近寄ってきて話しかけるので勉強にならないのだ。特に髪の毛を二つにまとめるようになってからは、その傾向が強くなっている。ただそれだけの事であるのに、何故他人の態度にこうも変化が起きるのか、不思議でならなかった。 確かに不思議であるが、だからといってそのまま放っておくのも実生活に支障がある。髪をまとめるのを止める事も考えたが、無名とクラウディアが露骨に残念そうな表情をしたので、そのつもりも失せた。 「何故、皆さん私に触りたがるのでしょう?」 「……うん? そうだね、きっとフェイトが可愛いのと、さわり心地がよいからじゃないかな」 同じ様に自室で勉強していたクラウディアに、その手が止まったところを見はからって声をかけた。 クラウディアの答えはフェイトの推測の範疇にとどまっており、現在の状況を改善するための材料にはなりえない。 「はい。ですが、皆さんは互いに触りあったりしていません。私だけが触られたり抱きしめられていたりしています」 「もしかして迷惑だった?」 「このままですと、「学院」での生活に支障をきたすのではないかと考えました」 クラウディアは腰を上げると、椅子の背に両腕を乗せて、さらにその上にあごを乗せてフェイトに向き直った。 「迷惑なら、止めさせるよ」 「いえ、そういうことではないのです。何故、私だけが皆さんにとって特別に可愛がられるのか判らないのです」 「うーん、そうだね、一つにはフェイトが嫌がるそぶりを見せないというのは大きいと思う。だから、みんな遠慮しなくなってきているというのはあると思うよ」 「はい。ですが、示される親愛を拒むのは、私にはできません」 フェイトは魔族である。それも双性者であり魔導八相に達した導師でもある上級魔族なのである。その自分が人族の集団に受け入れられ、純粋な好意を示されるということは、とても価値があることだと思っていた。かつて自分を救ってくれた黒騎士ヒュドの言葉を、彼女は一度として忘れたことはない。この「帝國」においてすら、魔族が差別されることなく生きてゆけるのは軍隊の中だけである、ということを。 ここはあくまで「教会」に所属する修道会が経営している寄宿舎制学校である。その集団の中で自分が魔族であることが明らかとなった時、どのように排除の対象として扱われるのか、それが非常に陰惨なものとなるであろうことをフェイトにも簡単に予想ができた。 「……そうだね。ばれてはいないけれど、フェイトには事情があるからね」 「はい」 「まあ、でも、その全か無か、という割り切りはちょっと違うと思うんだ」 「といいますと?」 「親しき仲にも礼儀あり、ってね。どんなに仲の良い間柄でも、守るべき礼儀はあるってこと。フェイトも、困るならば、相手にそう伝える必要はあると思うよ」 「……………」 確かに礼儀は人間関係を円滑に保ってゆくために必要なプロトコルである。それが理解できないほど、フェイトも物知らずというわけではない。だが、その線引きがよく判らない。元々彼女は、森の中で母親と二人きりで生活していたのだ。微妙な人間の間柄の機微にうとくても仕方がないといえた。 「まあ、そのあたりはおいおい学んでゆけばいいんじゃないかな?」 「はい」 フェイトの困惑をみてとったのか、クラウディアは、それ以上深く話を進めなかった。 フェイトは、クラウディアのそうした気配りを常々好意的に思っていた。だから、この瞬間、ふと親愛の情を抱いているのだ、と、彼女に示したくなったとしても、それはそれで自然ななりゆきであったといえよう。 「クラウディアさん」 「なんだい? あらたまって」 「もふもふしてよいですか?」 「はい?」 突然のフェイトの希望に、さしものクラウディアも思考がおいつかず固まってしまっている。 クラウディアの思考が再度動き始めるまで、フェイトは黙って待ち続けた。 「……ええと、なんで突然そういう話に?」 「もふもふしたくなったからです」 この「学院」に来てから、クラウディアはフェイトのことを親身に世話してくれていて、そして温かく見守ってくれていた。そのことには常々感謝していたし、そして感謝しているという事実を示したいと思うこともままあったのだ。ただそれを示したくても、これまではそのための手段を彼女が知らなかっただけである。触れたり、撫でたり、抱きしめたりすることが相手への親愛の情を示す行為ならば、さっそくそれを実行してみるべきであろうと、彼女はそう考えたのだ。 「う、うん。それは構わないけれど」 「ありがとうございます」 フェイトはぺこりとお辞儀をすると、そのままクラウディアの寝台の横に移動した。 「つまり?」 「クラウディアさんは、私よりもずっと背が高いです。そのままではもふもふできません」 「うん。じゃあ、そこに座ればいいんだ?」 「はい」 クラウディアは、フェイトの返事にうながされるようにして、自分の寝台の上に腰を下ろした。 フェイトは、自分も靴を脱いで寝台の上に上がると、クラウディアの横に膝立ちとなって彼女を抱きしめた。まずは彼女の頭を自分の胸に抱きしめ、ゆっくりと髪をなでる。それから鼻先をその黒い真っ直ぐの髪にうずめ、ほほすりした。普段知っているよりも、ずっと強く彼女の体臭と体温が感じられる。 クラウディアの体温が徐々に上がってゆくのを感じ、フェイトは、自分の心臓の鼓動がそれに合わせて早くなってゆくのを自覚し、どうしようかとしばし考えた。 「……はいぃ!?」 フェイトが出した結論は、クラウディアのことをもっと強く抱きしめることであった。 そのまま彼女の膝の上にまたがり、腰を下ろす。眼鏡越しに見開かれたクラウディアの蒼い瞳をのぞきこんで、彼女の上げた声にフェイトもびっくりしてしまった。 「ええと?」 「……駄目ですか?」 「い、いや、かまわないよ、うん」 「ありがとうございます」 クラウディアのかけている眼鏡が、なんとなく二人の間の壁になっているような気がして、フェイトは少し不愉快に思った。彼女はそのまま両手でそと眼鏡を外し、クラウディアの机の上に「転移」させた。 素顔の彼女は、頬を上気させていて、そしてその蒼い瞳がすっと吸い込まれるように澄んでいて綺麗だとフェイトは感じた。彼女の瞳に映る自分の顔も、きっと頬が上気していて、そしてその瞳を綺麗だと思ってくれると嬉しい。そう思った少女は、自分の鼻先を彼女の鼻先にすりつけ、また彼女の匂いをかいだ。今度は、少し汗の匂いが混じっている。 その汗の匂いが自分のものか、彼女のものか判らず、フェイトはクラウディアの身体に両腕を回し、鼻先を彼女のほほにあてた。 「……………」 「汗の匂いがします」 ほほから首筋に鼻先を移動させ、そして互いの身体を密着させる。とくとくと早くなってゆく心臓の音はどちらのものか。 「あ、あのさ」 「はい」 「ええと、すごい言いにくいことなんだけれど……」 「はい」 「膝に、当たってる。その、固いのが」 「?」 ほほが熱いくらいになってしまっているクラウディアが、かすれがちな声でそう言ってきたとき、フェイトはその言葉の意味が理解できていなかった。 しばらくその言葉の意味を考え、そして、自分が双性者で、そのもう一つの男性としての自分も上気していることに気がつく。 「問題なのですか?」 「……ええとさ、さすがに嫁入り前の身としては、ちょっと刺激が強すぎるというか、いや、フェイトのことが嫌だとかそういうんじゃなくて、つまり、乙女として恥ずかしいというか……」 「つまり、問題なのですね」 「……うん……」 問題があるというのならば、仕方がない。これ以上クラウディアをもふもふできないのは、本当に、真に、心の底から残念であるが、しかし、今は諦めるしかない。 フェイトは、心惹かれる思いの辛さを必死になって我慢しつつ、ゆっくりと自分の身体を引き離した。 目の前のクラウディアは、顔は真っ赤に茹で上がっていて、そして今すぐにも崩れ落ちそうなくらいに脱力している。自分も体温が上がり、心臓の鼓動がいつになく早くなってしまっていて、このまま同じ寝台にいる事がいたたまれなくなる。 いう事をきかない身体を無理矢理動かして、寝台から降りて靴をはいたフェイトは、クラウディアの顔をじっと覗き込んだ。 「……また、もふもふしてもよいですか?」 「……毎日、とかじゃなければ、いいよ、うん」 なんとか自分を取り戻したクラウディアは、何度かまばたきをしてから、フェイトの瞳を見つめ返しつつそう答えた。 フェイトは、何故に皆が自分のことを抱きしめ、もふもふしたがるのかが理解できた。次の機会には、抱きしめるだけではなく撫でてみよう。そういう欲求が心のうちに湧いてきて、その事実に新鮮な驚きを感じる。そして、きっとそれはとても気持ちがよいことに違いない、そうも思った。 フェイトは、新たに知った感情の動きに軽い驚きと、大きな満足を感じ、そのまま寝巻きに着替えて自分の寝台にもぐりこんだ。 そんなフェイトが寝息を立てるまで待ってから、クラウディアはのろのろと身体を起こし、自分も着替えて寝台に転がった。 次の日の朝には、二人とも普段の通りに戻った様子になっていた。正確には、何も無かったかのように振舞うことで、二人の間に生まれた微妙な雰囲気を無視することにしたのであるが。ただ、その事実を理解していたのはクラウディアだけであって、フェイトは本当に普段どおりに振舞っていたのであったが。 そんな二人が食堂へと向かう途中、同じように食堂に向かう無名と一緒になった。 「よう」 「おはよう」 「お早うございます」 「……?」 互いに挨拶を交わしたところで、無名が足を止めていぶかしげな表情になる。 フェイトは、そういえば無名にも親愛の情を示さないといけない、と、突如そういう思考が発生していた。クラウディアに親愛の情を示したのである以上、無名にも同じ様に振舞うべき、と、そう考えたのだ。 「無名さん」 「ああ?」 「もふもふしてもよいですか?」 「!?」 フェイトの突然の言葉に、無名は、驚愕に目を見開いてわずかに口をあけた。そして、何度も視線をクラウディアとフェイトの間をいったりきたりさせ、最後にクラウディアのことをにらみつけた。 「お前、フェイトに何をした?」 「……わたしじゃないよ。ううん、正確には、皆にされていることを自分でもしてみたくなったんだ、フェイトは」 「臭い、混じっているぜ」 すっと目を細めて殺気だった無名を、フェイトは、そっと近づいてからその両頬を両手ではさんで自分の方に顔を向けさせた。 「もふもふしていいですか?」 「……お前」 「いいですか?」 じっとフェイトに瞳をのぞきこまれ続け、無名は、まとっていた殺気を消し軽く頬を上気させて呟いた。 「好きにしろよ」 食堂へと向かう女生徒らの注視の中、存分に無名をもふもふしたフェイトは、何かすっきりした憑き物が落ちたような表情で食事をとりに歩き去った。 残された無名は、顔を真っ赤にし、腰が砕けたのが廊下にへたりこんだまま、軽く口をぱくぱくと動かしている。クラウディアは、そんな無名のことを抱き起こすように立たせると、肩を貸し抱きかかえるようにして食堂へと向かった。 「……なあ、クラウディア」 「なに?」 「俺もお前の事をもふもふしていいか?」 「……人目につかないところでなら」 「お前、本当にいい奴だよな」 「そんなんじゃないよ」
https://w.atwiki.jp/zillollparody/pages/34.html
「じゃあよ、カルラは?」 「俺はアリ。見た目と同じで凄いよ。彼女」 「僕も・・・・・アリ・・・・」 「えー、まー確かにツラもスタイルも良いけどさ、アイツ軽く革新(○チガイ)入ってんじゃん!ナシ!」 どん百姓の馬鹿と、馬鹿に轢きずられるコーンスと、テラネの肥沃な大地が産んだ大馬鹿。 馬鹿の馬鹿による馬鹿のための最高首脳会談。今日のお題は「コイツならヤれる?ヤれない?」 「次ー。ユーリス」 「アリ。以外に積極的、と思う。」 「僕・・・・・アリ・・・・」 「顔だけならアリだけどさ、ナシだろぉ。だってアイツカルラとは別のタイプの革新(キ○ガイ)だし。」 「えー、じゃあ、次。ザギヴ姉さん」 「アリ!大アリ!マジお願いしたいよね!」 「・・・・・・アリ。」 「無論。俺もアリ!おっ、全3票!!ついに決まりが来た! つーかさ、ナッジさっきから全部アリだな。溜まってんの!?」 「ちっ違うよ!だってナシなんて失礼じゃないか!!理想が高いんだよヴァンは!ねぇ、チャカ?」 「うん。ザギヴさん以外全部ナシだよね。なーんか理由つけて」 「いいじゃんよ高くて、理想!理想は高ーく持たんとナッジくーん。ところで、ルルアンタ」 「・・・・・・・ア、アリ」 「ほら!ヤバイって、ありゃ犯罪だよ!お前そのうちエルファスって言ってもアリって言うぞ!」 「あー、ハイハイ。ナッジにヴァン。俺からも行くよー。フェティ」 「ナシダネ!!×3」 「ちょっとアンタ達。さっきから何してんの、アタクシの尊さについてでも語ってるのー?」 振り返ると、今のお題、フェティがエプロン姿で館の主オルファウスを抱き締め、訝し気な表情で覗いていた。 「ご飯よ。アンタ達みたいなギガど下等生物にも餌を用意したアタクシの慈悲に感謝なさい。」 言うより早く、ヴァンはもともとオルファウスの寝床であったベットを飛びだし、一目散にリビングへと跳ねていった。 「ああ、私のお布団が・・・・」 神聖王国暦1204年10月 すでに、獅子帝ネメアが亜空間にほうり出されてから半年が過ぎようとしていた。 とは言うものの、リーダーである無限のソウルを持つ者が「大丈夫、生きてんじゃない?」の鶴の一声で 完っ璧に放置しきっている状態のまま。のほほんと時だけが過ぎていた。 その間、エンシャントの住民消滅等の大事件が有ったが、概ね彼等には「平穏」な毎日が過ぎ去っていた。 「ちょい!カーチャン!何で俺のだけこんな飯少ねーんだよ。ナッジの半分も無いじゃん!」 「ウルサイわね!じゃあアンタはナッジやルルみたくキノコ拾いしてきた!? フェティみたく料理してくれた!?チャカみたく芋や小麦を持ってきてくれた!?」 と叫ぶのはケリュネイア。そもそもアンタの母親になった覚えは無いとぼやく。 仕方なく器に入った芋とキノコのスープを飲み干す。 現在、この猫屋敷には居候を含めて6人と2匹が共同生活を強いられていた。 もともと住人であったオルファウスとネモとケリュネイアに加え、 帰る場所の無いナッジ、まだ帰るわけにいかないフェティ、帰る必要の無いルルアンタと、ただ帰らないヴァン。 そして丁度穀物の収穫が終わり、おすそわけに来たチャカ。 チャカは疲れた顔でスープをすする。 「今年もさー、ネーチャン全然手伝ってくれねーの。」 「え、今年は収穫時期は特に何もイベントらしいイベント無かったよね?」 「突然さ、ニイサンと婚前旅行だーって、姿暗ました。」 「あー、『ゴリ』とレムレム兄やん。ホンット奴等もテキトーだよなー」 口でスプーンをくるくる廻すヴァン。傍らでネモと遊ぶルルアンタを見ながら、 あーっ、つっまんねーなー。なーんかこう俺の熱いハートを焦がすイベントはねーかなー。 バキッと柄杓がヴァンのデコを直撃する。「食べたら片づけなさい!」とケリュネイア。 いそいそ片付けをしながら、洗い物をするフェティとケリュネイアの尻を見比ていた。 フェティの小振で締まったお尻と、ケリュネイアの大きめで肉付きのよいお尻。 どっちもナシにはしたけど、あーっ、こんな良い女が近くでケツ振ってんのに、何で俺等は童貞なんだーっ。 とムシャクシャ。 「そろそろじゃないんですか、ケリュネイア。」 「あ、そうね父さん。今呼ぶわ」 ブゥンという眩しい光を放ち、リビング中央に配置された転送機から見覚えの有る黒いミニスカートが帰ってきた。 「お帰りザギヴ。どうだった?」 「駄目ね。アキュリースだけじゃなくて近くの漁村まで廻ってきたけど、無理、出せないそうよ」 「やはりそうですか。確かにワッシャー海賊が無理なものは他も無理というわけですね。」 「ええ。イークレムンからもお願いしてもらいましたけど、今の海の荒れ具合の原因は、 ダレカサンがお戯れに海王様を殴り殺したのが原因じゃないかって最後に嫌味言われてきました。」 全員、特にチャカが大きく頷くと、ザギヴとケリュネイア「だけ」が大きな溜め息をついた。 「兄さん・・・・心配だわ。闇の門の島までの足も無いから・・・・」 「ネメア様・・・・・」 鼻をほじほじ、先ほど最高得票数を獲得したザギヴを眺めるヴァン。 「帰ってきたばかりで悪いんだけど、アミラルまでお願いできるかしら。1週間ぐらいで戻るから」 「ええ、アミラルからじゃ遠回りになるけど、方法も無いものね」 と、ケリュネイアが転送機に手を翳そうとした瞬間。 「ア、ジャストモーッッッッメンツ!!!!」 馬鹿。基いヴァンが、突然ケリュネイアとザギヴの間に入り込んで制止した。 「ちょいちょいちょーい。俺もアミラル行くーっ!!だって姉さんアミラルはロストール圏よ! 元、とは言えディンガルの将軍様が闊歩してたら悪い冒険者に捕まっちゃうよ!俺ボデーガードで連れてってよ」 フゥン、とザギヴは鼻で溜め息をつく。「結構よ。あなたに来てもらわなくても自分の身は守れるわ。」 「そんなこと言わないでさ。あ、大丈夫。ナッジとチャカも連れてっから!」 ええっ!とヴァンのいきなりの発表で、驚くナッジと、まぁいいかな?という表情のチャカ。 「ちょっと!ヴァン勝手に決めないでよ!僕まだ他所行きの用意もしてないし・・・・」 とナッジが慌てると、そのままナッジとチャカの肩を両脇に抱えて、3人で頭をゴツンとぶつけて 「ちょい、聞け。俺すっげえこと思いついた。」とコソコソ話。 「なっ、何?何?変なことならイヤだよ・・・・・」 「俺、だいたい予想付いた」 「ザギヴ姉さんとアミラル。行こうぜ。何ってったて最高得票だぜ!これほどおあっつらえ向きは無ぇって」 「何?さっきの!?」 「オウ!第1回!アユテラン杯争奪、チキチキ『姉さん、僕のチンコがソリアスです』大会開催だぜ!」 「あの、ケリュネイア、早く送ってもらえないかしら。」 ザギヴがうんざりした表情で促すと、ケリュネイアは両手を広げて訴える。 「まぁ、あの馬鹿の言うことも確かだし、危険かもしれないから、連れて行ってよ。ね。ね。」 本心はこうだ、ナッジとチャカは良いとして、無駄飯食らいの馬鹿の食い扶持を減らしたい、 ザギヴには悪いがこの際1週間ほど子守りを放棄したいから、とのこと。 「ハーイ!決定!決定!ナッジもチャカも行くからさ~!どーんとラドラスにでも乗った気分でいてよ!」 「お願い。早く送って」 「ごーめんなさーいザギヴ!ホント。いいじゃない楽しいわよ。みんなで行くのも」 「お願い」 かなり険しい表情で睨むザギヴにケリュネイアは手をスリスリ、苦笑い。 結局、ケリュネイアに押し切られる形でザギヴも仕方なく了承した。 「お願いだから邪魔しないで。アミラルに着いたら他所で遊んで来て」 相当イライラしているザギヴの話なんてヴァンはおかまいナシ。 「じゃあ、お願いねザギヴ・・・・・ゴメンネ」 「あ、お土産お願いしますね。この身体になってからお魚が恋しくて」 「ほら、ブサイク猫さんもバイバイして!バイバイ!」 「あー、バイバイバイ!ったくうるっせえのが消えてちったあ楽になると思ったら!」 「別に帰ってこなくてよくってよ。特に宿屋の馬鹿息子~」 ────ブゥン。 四人の姿が光の彼方へ消えた後、ふとケリュネイアは呟いた。 「ねえ、父さん。今ふと思ったんだけど、転送機で闇の門の島って行けないの?」 「あー、行けるんじゃないんですか?でもやっぱり旅をするなら徒歩に限るじゃないですか」 アミラル──── チャカ的にはかなり思い入れの有る街。 ユーリスを助けるのに必要な3000ギアを払うため、突然姉から「お前、今から殴られ屋をやれ!」と指示され 海王の像の前で顔面が20倍くらいになるまで「お客様」にボコボコにされた、思い出の地。 宿屋の店主が、あの時ゃ大変だったなぁ!と笑う。 チェックインを済ますと、3人はまた作戦会議。他の部屋に泊まると聞かないザギヴを残して。 ヴァンの作戦として、サンポデモシマセンカ?→頃合を見計らって拝み倒す→アライケナイボウヤタチネ。 絶対に上手く行く訳の無い愚弄ファイターの都合の良い絵空事。 ナッジはヴァンに「ヤれる」「捨てる」と人指し指と中指の間に親指を入れるアレで説得され、渋々OKを出す。 夜になるのを待って、明らかに負け戦確定の作戦が決行された。 「あ・・・あ・・あ、ザ、ザギヴさん・・・・」 呼び出す役に廻ったのはナッジ。この作戦、成功すれば貴様が特隊だ!と焚き付けらての事。 「何?」 「その、あの・・・・・一緒に、散歩しませんか・・・・?」 「散歩?」 「あ・・・はい・・・あ、あのイヤなら別にいいです!ゴメンナサイ!!」 言葉少なく応えるザギヴに直感的にヤバいと感じたナッジはすぐさま逃げの準備に入る。 「・・・・いいわよ。夜風に当たりたいわ。」 「ス!スミマッ!えっ?」 思いの他、すんなりと承諾するザギヴに、最初の段階から失敗必至と踏んでいたナッジはたじろぐ。 「どうしたの、行かないの?」 「あっ!いっ行きます!お願いします!」 夜風が涼しい。石段を渡り付かず離れずの距離で歩く男女、月光を頼りに歩む。 「少し涼しいわね。」 「え、あっ・・・・はいっ。」 思いの他、ザギヴは優しい。一重にナッジに対する信頼の現れである。 長い階段を降りると、昔、ユーリスが破壊した宿屋の別館の方へと足を運ぶ。 「よっ」 突然ザギヴが階段の端の縁石に乗り、両手を水平に広げて、トットッとコミカルに歩き出す。 「あ、大丈夫ですか?危ないですよザギヴさん。」 「ふふっ。大丈夫よ。そんなに運動神経は悪く無いわよ」 以外な一面。こんな姿を見るのはナッジも初めて。 よっよっ、とバランスを取りながら進むザギヴを見て、何故だか鼓動が早くなるナッジ。 その瞬間、宿屋の別館の手前の茂みから何かが飛びだしてきた。何かと言うか、アレである。 ソレは土下座の状態でロングフィードしてくると、そのまま土下座の体制で着地。 「きゃっ」少し体制を崩すザギヴの肩を倒れないようにナッジが抑えた。 開口一番、目の前でロストール→ノーブル間の手紙配達よりも安い土下座をする馬鹿が叫んだ。 「姉さん!一生のお願いです!俺のアンギルダンで姉さんのロストールを攻略させて下さい!」 目をぱちくりとさせるザギヴと、少し抱き締める形で抑えてしまい、わわっ、と申し訳なく離れるナッジ。 「・・・・何を言ってるの?」 「あ、だから、その、俺のオチンロンを姉さんのオマンレンに出会・・・・」 一人土下座外交を行うソレが、即座にヴァンだと察したザギヴの目は冷たく輝く。 すると、ナッジも突然土下座。「ごっゴメンナサイザギヴさん、僕です!僕が全部悪いんです!」 「馬鹿!ナッジお前まで謝るな!」「だってだってだって!ホント謝らないと!」 スゥーと息を深く吸い込むザギヴ、そして深い溜め息をふはぁー、と吐く。 「あなたが一緒に来た理由はよくわかったわ。宿屋に帰りなさい。そして10日間私の前に現れないで。」 「ナッジ君も。彼に指示されたことだろうけど、私を失望させないで。自分をしっかり持ちなさい。」 と冷たく放ち踵を返し、もと来た路を帰ろうとした瞬間、ザギヴより少し背の高い少年の陰が立ちはだかる。 瞬間、少年はするりとザギヴの胸元のスカーフを抜き取ると、くるりと慣れた手付きでザギヴを後ろでに縛った。 「なっ!チャカ!?よしなさい!あなた何をしているのかわかっているの!!」 チャカは聞かない。まるでそれが当たり前の行為かのようにそのままザギヴを軽々、お姫様だっこ。 「チャカ!!」「うぉぉぉぉぉぉ!!すげえ、根性有るなお前!!」 チャカはニカッと笑うと「こういうのはさ、ちょっとの勇気と強引さが必要なんだよ。」 埃を被ったベットの上、崩れた天井から月の光が漏れる部屋。 少年3人が妙齢の美女に絡まる。一見すれば、少年をはべらかす妖女の姿。 しかし、その妖女であるべき人物が後手に縛られ、一番その状況に緊張しているのが少し不思議な画。 裸にされているワケでは無い。長いブーツだけを脱がされて、狭いベットの上で4人が抱き合っている。 チャカはザギヴの背もたれのように後ろから抱き締め、ヴァンは左の脇に顔を押し付けてお腹に手をあてて、 ナッジは裸足の足を身体で包みながら、膝小僧に鼻をつけて寝そべっている。 最初こそ、ザギヴは冷たい脅しの言葉で三人を恫喝し解放させようとしたが、3人とも突然襲うようなことはせず じっ、とこの状態を保ち続けている所を見ると、どうやら少しは安心してよさそうだ、と勘繰らせた。 3人とも嫌いでは無い。仲間としてはともかく人間としては、好き。 だから、光のほとんど届かない空間ならば、少しは冒険してみたいな。と女心を揺らしていた。 心配なのは、アキュリースからここに来るまでにお風呂に入っていない。足は体は匂ってないか、 そして、この子達にこのまま自分の知らない遠くの場所まで連れていかれるのではないかということ。 「あの・・・・もう辞めましょう。こんなこと・・・あなた達にも良くないことだから・・・・」 そう自戒のように呟く。が、虚空に声だけが掻き消されるのみ。 くくん。と髪の匂いを嗅ぐチャカ。そしてうなじを鎖骨を肩甲骨を、指でするりするりと撫で回す。 「辞めましょう・・・・今なら今日のことは全部忘れるわ・・・・・」 「どうして?」とチャカ。 「こんなことで・・・・貴方達のこと嫌いになりたく無いわ・・・・」 すすん。とビスチェのすそから脇の匂いを嗅ぐヴァン。お腹に置かれたヴァンの手が熱い。 「どうして?嫌いじゃないってことは俺達のこと、好きってことでしょ?ザギヴさん」 膝小僧にちゅっと口付けるナッジ。足がナッジの体温でじとっと温もる。 「あの・・・・私は・・・・男の人とソウイウカンケイになったこと無いの・・・・」 「・・・・い゛!今何と!??」 「あの・・・・だから、私、その、男の人とソウイウカンケイになったこと、無い。だから、怖い・・・・」 スライムのように、ズルリとヴァンは脇から崩れ落ち、ナッジはぴょいんと飛び上がりザギヴから離れた。 「あ、え、ゴメ、ゴメンナサイ!!」「てっ、撤収!撤収!姉さんマジゴメン!!」 すでに逃げる準備の二人、逆にそれが勇気の告白を行ったザギヴを傷つかせるとも知らないで。 「しようよ」 二人が離れたので、身体に触れる面積の増えたチャカは、ぎゅうっと強くザギヴを抱き締める。 「え・・・駄目。やだ。怖いわ。イヤ。イヤよ。出来ないわ。そんな。私なんて・・・・」 「最初はさ、誰でもそうだよ。怖いよね。俺もそうだったもん。 でもだからって怖い、自信が無いって逃げてたら一生出来ないよね。頑張ろうザギヴさん。」 優しく諭すチャカ。ザギヴの頬に口付ける。 「って、他人様を後手で縛るような奴の台詞じゃないけどさ。」 少しおどけると、ザギヴも深い深呼吸を行う。 「うぉっ!何だお前!何?今『俺もそうだった』とか言ったよな!お前俺等側の人間じゃないの?」 「え、誰!?誰!?僕知ってる?絶対絶対言わないから教えて??」 「あ、うん。カルラと、オイフェと、ユーリスと、エステルと、あと姉ちゃん。」 「・・・・チャカ。俺は親切な男だから、敢えて最後の言葉だけ聞かなかったことにしてやる。」 薄い月明かりの部屋で美女と少年達の甘い吐息が交差する。どちらもぎこちなく揺れて。 黒いビスチェを脱がすと、見た目からは想像も付かないほどの地味な白いブラジャーが覗く。 ヴァンとナッジはザギヴの背中をこねくりまわして、どうにかしてブラジャーを外そうと悪戦苦闘。 「わ、わかんない?」「め、めんどいから上にずらそうぜ?」 「あ、ソレ多分前ホックだよ」とチャカの声。近くで椅子に座りながら外を気にする。 そして、簡単にブラジャーの形式を見破られてしまったことが少しだけザギヴの心にちくりと刺さった。 月明かりで透けるような白さを讃える乳房、大きくて、そして甘い香りがする乳房。 せーの、でナッジとヴァンは左右の乳首をはぷっと口に含んで、舌で転がしたり、 きっと光の下で見たら凄く奇麗なおっぱいなんだろうなと想像しながら愛撫する。 目を瞑り、表情を変えず、ザギヴは微動だにせず黙りこくる。 「あのね、ザギヴさん。ウソでもいいからさ、少しだけ声出して『ハァ、ハァ』と呼吸してみてよ。 男はさ、特に始めての時って女性のリアクションが無いと上手く波に乗れないんだ」 チャカのアドバイスはザギヴの心をまたちくりと突き刺し、顔をこわばらせる。 一番チャカに傷つけられたのは、3人じゃ大変だろうから、と見張りを買って出てくれた彼の優しさ。 いや、今自分より全てに於いて上回るチャカの存在がザギヴの心をちくりちくりと刺激する。 「・・・・はぁ・・・・・あ・・・・はぁ。」 ちくりと傷つけられたと思う心が、いつのまにか身体の火照りの焚き付けに変えられたことにザギヴは気付く。 ああ、イヤな女。7つも年下の少年にアドバイスされて、勝手に傷ついて。でも、それすら火照りに変えるなんて。 ぷはっ。二人とも乳房を堪能すると、ザギヴの顔がこわばり紅潮しているのに気付き、 どうやら今までの行動に間違いは無いみたいと安心し、顔を見合わせ頷き、持ち場を変える。 ナッジはそのまま先ほどの足の部分に顔を移すと、内腿に唇を這わせる。 ヴァンは目を瞑るザギヴの耳をはむっと甘嚼みすると、「チューしていい?」と聞く。 ザギヴは答えない。ヴァンは最初イヤなのかな?と不安になるが、少しだけ唇を震わせるザギヴを見て 直ぐ真意を察知し、6つ年上の女性の柔らかな唇に自らの唇を重ねた。 下手なキスはお互いの前歯をカチリとぶつける。 唇を離して、ヴァンは先ほどの前歯のぶつかる感触が楽しかったのか、またカチリと歯をぶつけながら口付けた。 はむ、はむ、と内腿を少しずつザギヴの熱を持った部分へと、ナッジの口が進む。 スカートをたくしあげられ、色気の無いただ箇所を覆うだけの白い下着。 ショーツの中心にはぐっしょりと、ザギヴの描いた乙女の鏡が水面をたたえる。 母犬の乳房を探す子犬のように、ナッジは鼻をショーツの中心に擦り当て、熱い吐息を吹き掛ける。 ぴとっ、鼻を離すと、熱くねっとりと滲み出た愛液が鼻の頭で糸を引く。 そのまま、無造作に伸びる腕がショーツの端を掴み、優しく脱がそうとする。 が、脱がせれない。腰を落としてこわばらせるザギヴの身体がそれを阻止する。 「あ、ザギヴさん。腰をちょこっと浮かせてあげて。でないと上手く脱がせれないからさ」 ズキン!心臓を鷲掴みにされるようなチャカの一言。 阻止したわけでは無い。どうしていいか解らなかっただけなのに・・・・。 屈辱と恍惚と、情けなさと淫らが入り交じり、ザギヴはパニックになっている。 仕方なく、脱がすことを諦めて、ナッジはショーツの中心を横にずらした。 クロッチの部分に触れた瞬間に絡むように濡れるその部分。初めて目にする、女性の一番大事な部分。 シールミア貝の身に似てるって聞いてたけど、全然違うな。凄く、綺麗。 「あの・・・・・ザギヴさん。ザギヴさんのおま・・・・『ライラネート様』は、 す、凄く綺麗です。あと、凄くいい匂いがします。あの、甘い花の蜜みたいな・・・・」 ナッジなりにザギヴの緊張を解すための言葉だった。 本当は、ほんのり醗酵したチーズケーキと表現すべき香りだけど、これじゃ傷つくかも・・・・ と気にするが、初めて男性に視られ触れられた部分の匂いを形容されること自体、既に羞恥。 硬直したザギヴの手足の指が、埃まみれのシーツをぎゅううと掴む。 美の女神に形容したその部分を、ナッジはまた母犬の乳をねだる子犬のように、舌を鼻を這わせた。 くちょ、ぺちょ、ピリピリと光の波が脳と秘所を行き交うような快楽。次第に荒い吐息がザギヴから漏れ出る。 ヴァンは、過去に「ゼネのおっさん」と「レルラのおっさん」から聞いたテクニックをフル動員させていた。 首筋を舐め、背筋を指で愛撫し、そして乳首をくりくりと引っ張る。付け焼き刃のヘタクソな愛撫。 「ふぅ・・・・ふっ・・・・はぁ・・・・」吐息を漏らすザギヴを見て、勝利(=ヤれる)を確信した。 「やい、ザギヴ」 ・・・・呼び捨てにされた。 「俺の名前、呼んでみろよ。ザギヴ」 突然、手を止めて顔を真正面まで向けて呼び掛けるヴァン。 「ぁえ・・・・・・・・・・ヴァ・・・・ン?・・・・・」 初めて名前を読んだ。嫌いなわけではなく、人物的に「あなた」や「彼」と呼ぶ方がしっくり来るのに。 「駄目だ。聞こえない!ちゃんと呼べ!」 悪戯に微笑む少年の瞳。今、こんな淫らな行為を行っているのに、目の前に居るのはいつもの瞳の大きな少年。 「・・・・ヴァン」 「聞こえない!心もこもってない!もっかい!」 「・・・・ヴァ・・ン!ヴァンッ!」 ン、の部分で甲高く声を上げる。ナッジに愛撫される秘所からの快楽の伝達が、語尾を荒げさせる。 「よし。よくできました。」にこりと笑うと、ヴァンはザギヴの唇を荒々しく奪い舌を絡めた。 「あ、やばっ」 突然、ザギヴとヴァンを現実へと引き戻すチャカの声。 「もしかしたら、誰か来たっぽい・・・・。」 顔を見合わせ、お互い無言で目を皿にするザギヴとヴァン。ナッジには聞こえていない。 「俺ちょっとおっぱらってくるね。それまで、静かにしててね。」 チャカはその場を離れ、外で揺れるカンテラの灯の方へと走っていった。 黙って見送るザギヴとヴァン、そして、また顔を見合わせると、さっきよりも更に悪戯な瞳でヴァンは微笑む。 (声出したら、外に聞こえるぜ) 耳もとでぽしょぽしょと話すと、ザギヴの唇の前で人指し指を立てて「シィー」のポーズ。 その人指し指と中指をザギヴの唇から口腔へと滑り込ませた。 つるつるした歯を指の腹でなぞり、舌の上に溜まった唾液を丁寧にこそぎ取る。 今ナッジに奏でられている淫らな音と同じ音を口の中でも鳴らされている。 指をちゅぽん、と抜くと、てらてらと指が濡れほぞり、その指が地虫のようにそのままシーツと背中の間を進む。 「!!!!!!?」 濡れる指が汗ばむ尻の谷間を経て、ナッジの顔から約10cm下ほど、もう一人の『ライラネート様』で止まる。 くりくりと弄ばれると、元々汗で湿る部分に指に絡んだ唾液が潤滑油となって、中指が第ニ関節の先まで侵食する。 「!!!ぁヤぁっ!!!」 叫ぶザギヴに驚き、ヴァンはとっさに乳首を責めていた左手で口を包む。 (バカザギヴ!声出したら外の人にバレるだろ!) その間も中指は止まらない。上下上下と指を運動させ、ナッジの愛撫とは違う退廃的な快楽がザギヴを襲う。 身をよじり、何とかその特異な愛撫から逃れようとするが、腰を浮かすとナッジの角がお腹に刺さる。 逃げられない。この愛撫から。「他の事には使わない」ような所を「こんな事」に使われてしまうなんて・・・・。 目をヴァンの方へと泳がせ、ザギヴは潤む瞳で懇願する。 (やめてほしいの?) 止めて欲しい。こんな快楽を覚えてしまったら、もうきっと帰ってこれない。こくりと首を縦に振る。 (何でもする?なら、やめていいよ) こくり、こくり、と二回ザギヴは頭を縦に振った。言葉の真意を読む気は廻らない。 (いいよ。約束だからな) ぬぽん、中指が抜かれた。安堵感と空虚な感覚が同時にザギヴを襲う。 しかし、さらにヴァンの意地悪がザギヴを襲う。 抜いた指を、口元まで持って行く、そして信じられないような言葉をヴァンは吐く。 (何でもするんだろ?じゃあ、指がよごれたから綺麗にしろよ!) びくんっ!体全体がまるで死後硬直のように固まり、大腿が愛撫するナッジの顔をぎゅっと押さえ付ける。 (やだ、なに、こんな、汚い。信じられない。無理よ。何?え?何?) 調子づくヴァン。しかしザギヴの意志を尊重するように、唇の手前で指を止めている。 やだ、やだ、やだ、と心の中で呟きながら。 ゆっくりと、ザギヴは舌を伸ばし、指を口に含んだ。 そして、脳内で言い訳を吐く自分の意志とは関係なく、ちゅっ、ちゅっ、と音を鳴らして、指を吸った。 (やだ、私、何・・・・してるの?信じられない。気持ち悪い。浅ましい。下品。いやらしい・・・・) 脳の裏側で言い訳を吐けば吐くほど、快楽があらぬ方向へとうねり、心と身体が分離したような気分になる。 ヴァンは、赤子のように指を吸うザギヴの口から指を抜くと「汚くないよ」と、また唇を奪い舌を絡めた。 いつも、言い訳ばかりをしていた。 恋愛の経験が無いのは、人並みの人生を送れないのは、身体に巣食う魔人の「せい」だ、と。 誰からも疎まれる存在、誰からも遠ざけられる存在なのは、ゾフォルの予言の「せい」だ、と。 そして、全てに打ち勝ち、言い訳の拠り所が無くなった時、 己自身、ザギヴ・ディンガルを一人の女性として心の底で認知するようになった。 だが、認知すればするほど、更なる言い訳で塗り固めて逃げようとする自分が居た。 私は違う。私は浅ましくは無い。カルラや、オイフェや、双子の妹のような奔放な女とは違う、と。 しかし、奔放な女というカテゴリーが有るとするなら、そこにエステルやユーリスや、あの子ですら入ってしまう。 結局の所、自分の作った、「男性経験の有る」奔放な女というカテゴライズで、自縄自縛に陥っていた。 いつも、女性陣がケセラセラと性の話題を語る中、全く同じ理由でザギヴとフェティだけが蚊屋の外に居て、 同じように「下らないわ」という言い訳で自己弁護し逃げていた。そんな自分が大嫌いだった。 が、更に自己嫌悪に陥るのは、遠くで聞き耳を立てる「浅ましい」自分の姿だった。 また、記憶をぐるりと1回転させる。 あの子が、「ザギヴを一人にするのは心配だから!」と猫屋敷から冒険に連れて行ってくれた時。 宿屋で夜中に、エステルとユーリスとあの子が、今まで出会った男性の話で盛り上がっていた。 この人とならエッチしたいよね!という話題。 寝たふりをしながら、またしても聞き耳を立てていた。 浅ましい。恥を知りなさい。そんな目で男性を見ているなんて信じられない。と言い訳をしながら。 ・・・・言い訳をしながら、声を出さずに一人、参加していた。 (あんな、誰でも女性と観たら口説くような男の何処がいいのよ!ふしだらに胸を開けさせて!) (確かに・・・・カッコイイけど。姉離れの出来ない男なんてイヤよ!それに、何よ、あのお腹丸出し!) (ベルゼーヴァ様・・・・・・・・・・・・・・・・・・) 沢山の言い訳を重ね、お眼鏡に叶ったのは、尊敬するネメアとベルゼーヴァと、温和で誠実なロイの3人だった。 本当は、いつも意識していた。 ふしだらな男のさり気ない優しさや開けた厚い胸板を、姉離れの出来ない男の美しい顔や割れた腹筋を、 少年達の甘酸っぱい汗の香りや真っ直ぐな瞳を、男性という存在を、いつか受け入れたいと。 本当は、いつも期待していた。 ヴァンが一緒にアミラルに行こうと言ってくれた時、ナッジが一緒に散歩をしようと誘ってくれた時、 チャカにどこかのお姫さまのように抱きかかえられ、優しくベットに寝かし付けられた時、 期待で高まった胸を言い訳の外壁で覆い、イヤな女を演じ、逃げて逃げて、孤独を求めていた。 幸福の熱で覆われたら、自分のような存在は溶けて無くなってしまうのではないかと怯え。 ねっとりと絡まる舌をやさしく離す。何度も口付ける内にヴァンは上手にキスが出来るようになっていた。 (・・・・意地悪してごめん。) 流石に調子に乗った、とバツが悪そなヴァン。そんなヴァンの姿ではっと追憶から現実に戻された。 ザギヴは、少し戸惑った表情で眉をひそめ、そして普段は見せないような柔和な笑顔でまた唇を求めた。 (・・・・・なんだか、もうどうにでもなっていい気分・・・・・) 「いやー、びっくりした!宿屋のおっさん!よくココがアミラルの若者の溜まり場になってるからって 見回りしてるんだって!てゆうか、ザギヴさん!声!びっくりした!猫じゃないですか~って誤摩化したよ!」 戻って来たチャカの声で二人はびくりと震え、身体を離した。勿論ナッジは気付いていない。 「あ・・・・ゴメン。いいよ。続けて続けて。」 「・・・・・ぁはぁ・・・・・あの・・・・・ふぁ・・・・・したい。」 悦楽の吐息に混じり、ザギヴは心に溜まっていたどす黒いものを吐くように、心情を吐露した。 流石にこれはナッジにも聞こえた。ポジション的に先発隊確定のナッジはびっしょりと濡れた顔を上げて、刮目。 「じゃ、ヴァン、そろそろさ、ザギヴさんの手を外してあげてよ。大変そうだから」 全裸の美女が月灯に照らされ、柔らかな隆起を晒し、八の字に太腿を開き寝そべる。 そして、ズボンを脱ぎ、下半身を露出させる少年。ブルブルと震え、額の先端の角が振動する。 「あ・・・・駄目だよ・・・・どうしてだろう。さっきまでガチガチだった僕の・・・・勃たない。」 「ナッジ!頑張れ気合いだ!エロいこと考えろ!アレ、カルラのケツとか、あと、アーギラシャリア?とか!」 見知る女の名前を上げられ、ザギヴは少しだけ寂しそうな顔をして、太腿を閉じる。 「ナッジ。リラックスリラックス。ザギヴさんもね。リラックス」 「あ、うん。リラックス。あとエロいこと・・・・・」 カルラのお尻、ああ、ちっちゃくて張りがあって、いいなぁ。。。。 アーギラシャリア?って、確かセラのお姉さん?美人だよね。スタイルいいし。実はおっとりした人だったし。 アレ?アーギルシャンマ?だっけ、アーギルダリアン?だっけ、アレ?それともアンギルダリアン?だっけ? (アンギルダン?) 「うっ!!!!!わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 「どっどどど、どーしたナッジ!」 「ゴメンナサイゴメンナサイ!!僕は駄目なコーンスです!!全然勃たないし変な妄想しました!!」 「馬鹿っ!こんなとこでコシんな!一世一代のチャンスだぞ!ゴウに入ればゴーティダイモン!」 いつも通りの少年達の即席寸劇に、ふと、今自分は何をしているんだろう?とはにかむザギヴ。 そして、白く長い指先を慌てるナッジの顔まで伸ばし、「抱き締めて」と哀願するように両手を掲げた。 ナッジは、伸ばされた手の先に自らの手をかいくぐらせ、優しく互いに抱き締めあう。 ザギヴの豊かな胸に顔を埋めるナッジ。乳房の奧から、ドクンッドクンッと早い鼓動を感じる。 僕と、同じだ。ザギヴさんも緊張してる。・・・・どうでもいいけど、おっぱい温かいな・・・・。 顔を見遣ると、慈母のような恋人のような、優し気で淫らな表情で谷間に潜むナッジの顔を見つめている。 ドクン。また海綿体をつたい、憤るような快楽がナッジの股間に集中する。 そして、恐る恐る、腰を落し、先端をザギヴの秘所に押し当てる。熱くて柔らかい。 「しっ!失礼します!」 素っ頓狂なナッジの台詞に、ザギヴはクスリと笑うと、静かに「・・・・どうぞ。」と答えた。 そうして、嘘つきで意地っ張りで寂しがり屋のライラネートは、男神を館へと迎え入れた。 「!!ぃっだぁっ!!!」 ザギヴの叫喚。先程までの甘い吐息とは真逆の耳を劈く悲鳴。 じわりじわりと、敷かれたシーツが赤く染まる。 「ああああっ!スミマセン!だっ大丈夫ですか!!」 「・・・・っ・・・・だ、大丈夫・・・・いいの・・・・続けてっ・・・・・」 ズリッ、ズリッ、愛撫される快楽とは違う、内臓を抉られるような苦痛。 どこかに傷を癒す快楽を探そうと、ザギヴは痛みだらけの空間から逃げるようにナッジの唇に縋る。 くっつけ離し、くっつけ離し、今痛みを産む空間と同じような動きで、唇を鼻を舌で舐る。 「ね、ね、ザギヴ・・・・姉さん?」 ナッジに独り占めされる形となったヴァンは、寂しそうにもじもじと呼び掛ける。 「あのさ、折角だから俺の、口でしてよ・・・・。我慢できない」 顎先に押し当てられるヴァンの生殖器。初めて見る。想像しているよりも、大きい・・・・・。 今、私の中で暴れるモノ、こんなモノが入ってるの?? 心で冷静な台詞を吐きつつも、痛みを堪えるために快楽を探す唇はヴァンを拒まない。 あくん、口を大きく開け、舌をチロチロと動かしながら含む。もう恥も外聞も無い。今有る痛みが全て。 涎が溢れ、くんくんと鼻を鳴らし呼吸しながら、喉元に蓋をするようにヴァンの生殖器を飲み込む。 初めての行為、上手に出来るわけも無く。上下の歯の突起がちくんちくんとヴァンを痛めつける。 「・・・・・っつ・・・・」 (姉さんだってナッジの我慢してんだ。俺も痛いとか歯とか言わない!我慢!) ちゅぽ、ちゅぱ、口の端から溢れた唾液が滴る。 やがて擦れる歯の刺激も快楽の糧となり、ヴァンは1分と持たず、達する。 「あっ・・・・ゴメッ、出る。出しちゃうねっ!」 ビクンとヴァンが震えて、口の中広がる苦味走るゼリーのような感覚。 と、同時に、自己の快楽まかせに腰を振るナッジも絶頂に達した。 「アアッ!!」少女のように高い声を上げ、引き抜き、力無くザギヴの腹部に射精した。 どろり、と粘膜を張る白濁の愛の欠片。お腹の上で熱く迸ると、体温を奪うように冷めていく。 呆気無かった。 もっと。濃厚で退廃的で、粘っこくて心と身体が乖離するような快楽に襲われるのかと思っていたが、 愛撫されていた時の方が、よっぽど想像のモノに近い、何とも味気の無い行為だった。 よく、カルラ達が言う、「向こうに行く」「ドロッと出る」「頭がパーになっちゃうような」 そういったモノとは懸け離れた、まるで儀式のような行為。 ただ、内臓を抉られたような痛みと、口の中を覆う苦みと荒い呼吸が、今までの全てが真実だと訴えかける。 なんだ・・・・こんなものなの?それとも、私はまだ本当の愛の営みを知らないだけ、なのかな? ごくん、とそれを飲み込むと、心の中に開いた風穴を埋めるように、一つの思考が定まった。 ────まだ、足りないな。まだ、したいな。もっと愛して、愛されたいな。 「ザギヴさん、お疲れ様。」 一部始終を観ていたチャカが、ザギヴの額にやさしく手を当て、ベッドの横に腰掛けた。 優しく微笑む少年の顔。額に置かれた手が汗を拭い、長い髪をそっと撫でる。 「わっ!!」 不意を突くようにザギヴの手が、チャカの股間へと伸びていた。其所は、熱く硬く勃起している。 「・・・・ごめんなさい。こんなになるまで我慢させて。」 「あ、いや、いいんだよ。大丈夫。」 「もう少し・・・・・身体を休ませたら、大丈夫だと思うから・・・・・その時は、チャカも一緒に、ね。」 普段の低く響くような声色とは違う、甘えるような艶やかな口調のザギヴ。 ニコリとチャカは笑うも、これは、大変なことを教えてしまったのかなぁ・・・・と少し心配の情を湧かせる。 さわさわと服の上からチャカの性器を摩るザギヴの手、チャカはその手を掬い上げて、優しく繋いだ。 「うん。じゃあ。体力が回復するまでゆっくり休も。今度は俺も仲間に入れてもらうよ。」 ザギヴは繋いだ手をさらに指1本1本互いに絡ませる形で繋ぎ直し、ぎゅっと握り返し、ナッジとヴァンに目を配る。 息を切らすナッジ。先ほどと同じような体制で、太腿を枕にして休んでいる。 ヴァンもまた先ほどと同じように、左脇に顔をつけ、二の腕を枕にして惚けている。 3人の体温がザギヴの身体と心を温めて、少しだけ下腹部の痛みを和らげて行く。 そうして、惚けるヴァンの唇にザギヴは唇を重ねると舌を滑り込ませ、口に残る苦いものをヴァンに返した。 「!!わっ!!!!きったねっ!!何すんのさっ!」 「・・・・さっきの仕返し。」 クスクスと笑うザギヴ。ヴァンは嫌そうに口を拭うと、耳もと囁くように語りかけた。 「ねぇ、ザギヴ姉さん?」 「ん?」 「あのさ、俺、結局チンコを入れて無いワケだからさ、俺だけまだカテゴリー的に童貞じゃん。 なんか、そんなズルいよな。2回戦の時は俺が入れる番で、いいよね?」 「ちょっと・・・・正直まだ痛いからそういうのは無しで・・・・。他ならどうにかするわ。」 少し寂し気な顔をするヴァン。だがすぐににんまりと邪な笑顔を浮かべる。 「他なら?」 「うん。なんとか。」 「じゃさ!じゃさ!俺コッチでエッチしたい!」 懲りないヴァンは、また先ほどと同じように、お尻の谷間に指を滑りこませると、トントンッとソコを刺激した。 ────バシッ! スナップの効いたザギヴの平手が、ヴァンの頬に放たれて乾いた音を発する。 そしてまたクスクス笑うと、翻した掌をそのままヴァンの頬に当て撫でると、呟いた。 「調子に乗らないっ。」
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1203.html
登録日:2011/09/01(木) 02 58 10 更新日:2023/05/29 Mon 11 08 15 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 AI S2U ⊃星⊂ ● ちょっとやりすぎた?←Don't woryy. とらいあんぐるハート インテリジェントデバイス オムライス オートマチック グレートハイジン デバイス レイジングハート ロストロギア? 不屈 不屈の魂 大体砲撃専門 好戦的 新幹線のアナウンス 次元連結装置 漢 自爆 薬(カートリッジ)中 飴 高町なのは 鬼に金棒 魂 魔法少女の杖←ではなく「魔導師の端末」 魔法少女リリカルなのは レイジングハート (Raising Heart) CV:Donna Burke 魔法少女リリカルなのはシリーズの主人公、高町なのはの使用する魔導端末。 ミッドチルダ式のインテリジェントデバイスで独立した意志と高い知性を持つ。 助けを求める声(広域念話)を聞いてかけつけたなのはにフェレット状態のユーノが「今の僕じゃアレを止められない」と、暴走するジュエルシード封印を依頼し、 その際に待機状態のレイジングハートを渡され、それ以降なのはが正式なユーザーとなる。 インテリジェントデバイスの使用には「相性」の問題が大きく関わってくるため、通常はあらかじめユーザーを限定した上で専用の調整を施し、 本人もそのデバイスの使用を前提とした訓練を積むのが一般的で、それ故かレイジングハートは誰からの使用者登録を受け付けなかった。 しかし、 風は空に、 星は天に、 不屈の魂はこの胸に! この手に魔法を! レイジングハート! セーット、アップ! ● stand by ready, set up. レイジングハートは見事起動し、なのはをユーザーとして登録した。 また、魔法戦闘経験の少ない主なのはの為、砲撃魔法に特化したデバイスとして自身を構築した。 元々はユーノが所持していたデバイスだが、彼は完全には使いこなせていなかったようである。 本編以前にはスタンバイモードのレイジングハートを用いてジュエルシードを一応封印している。 起動呪文(正確には、起動用パスワード)は以下の2種類が確認されている。 我、使命を受けし者なり。 契約のもと、その力を解き放て。 風は空に、星は天に、そして不屈の魂はこの胸に。 この手に魔法を。 レイジングハート、セットアップ! 風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に、不屈の魂はこの胸に! レイジングハート、セットアップ! 『ORIGINAL CHRONICLE 魔法少女リリカルなのは The 1st』によると、 原作同様、魂と書いて『こころ』と読む。 本編のなのはとフェイト、2人の少女の出逢いの物語に隠れて影が薄いが、 ここにもまた1つ奇跡の出逢いがあったことを忘れないでもらいたい。 なおレイジングハート自身のAIの性格は冷静かつ情熱的なのだが、 「バルディッシュはフェイトの負担が過ぎないように気を配るのに対し、 レイジングハートは一心同体ゆえになのはと一緒になって無茶をする」 としてフェイトが心配してるほどかなり無茶をしやすい部分もある。 以下デバイスとしての性能。 ◇レイジングハート ユーノから渡された初期の状態。モードは3つ。 スタンバイモード 出典:魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st、DVD付属特典パンフレット、キングレコード、2010年11月26日発売、© NANOHA The MOVIE 1st PROJECT 待機状態。赤い球体でなのははペンダントのように首から下げている。 この状態でも、ある程度の魔法の補助が可能。 デバイスモード 出典:魔法少女リリカルなのは/魔法少女リリカルなのはA's ビジュアルファンブック、晋遊舎刊、©なのはPROJECT 、2006年3月10日 基本形態。射撃能力を主とした魔導師の基本的な性能をもつ。 シューティングモード 砲撃に特化した形態。なのはの得意とする砲撃魔法はこれで放たれる。 アクセラレイションでさらなる強化も可能。 シーリングモード 出力を強化した形態。本体から翼が発生する。ロストロギアの封印処理や集束砲撃に使われる。 一応、A's以降で言うフルドライブ形態らしい。 ●劇場版 物凄くよく喋るようになり状況分析や航空軌道・空間戦術の教練など上記の設定に違わぬハイスペックAIと化す。この辺はA's以降からの設定の逆輸入という面も。 ついでにユーノが遺跡から発掘したデバイスということになっている完全にロストロギアじゃないですかヤダー! デバイスモード 出典:魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st、DVD付属特典パンフレット、キングレコード、2010年11月26日発売、© NANOHA The MOVIE 1st PROJECT なのはのバリアジャケットのカラーリングに合わせたパーツが追加される カノンモード 出典:魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st、DVD付属特典パンフレット、キングレコード、2010年11月26日発売、© NANOHA The MOVIE 1st PROJECT 形状が1から変更され、鋭いイルカヘッドのような形になる。カッコいい。 さらには収納型のグリップとトリガーまで追加される 劇場化にあたり、「魔法少女の杖」ではなく「魔導師の端末」へと完全にシフトしているようである ◇レイジングハート・エクセリオン (Raising Heart Exelion) A s第一話にてヴィータの攻撃を受け止めきれず破壊されたレイジングハートが、 その後自らメカニックに依頼しカートリッジシステムCVK-792A搭載をした新しい形。 6連装オートマチック型カートリッジシステムを装備。性能を大幅に強化している。 ついでにこの辺からよく喋るようになる。 シーリングモードはオミットされ、モードは4つ。 スタンバイモード 以前とかわらず。ペンダント型。 第五話でなのははヴィータに話し合いを求めたときに「和平の使者は槍を持たない」と拒絶されたので、 その後の第七話なのははヴィータに対して、最初はスタンバイモードにしたままで声を掛けている アクセルモード 出典:画像左、魔法少女リリカルなのは/魔法少女リリカルなのはA's ビジュアルファンブック、晋遊舎刊、©なのはPROJECT 、2006年3月10日 出典:画像右、魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's、DVD付属特典パンフレット、キングレコード、2013年3月22日発売、©NANOHA The MOVIE 2nd A's PROJECT 中距離射撃と誘導管制、強靭な防御力を含めた中距離高速戦専用モードとなっている。 なのはの特性に合わせて、魔力弾を加速(Accel)させることに特化したところからこの射撃魔法の操作性・加速力を向上させた形態。 圧倒的な弾幕と敵の射撃を撃ち落とす精度に応えるだけの性能を持つ。 StrikerS後期以降は基本的にエクシードモードを使うためか教導の時くらいしか出て来ずサナギマン状態。 でもOPで毎回登場するので意外と目立つ。 バスターモード 出典:画像左、魔法少女リリカルなのは/魔法少女リリカルなのはA's ビジュアルファンブック、晋遊舎刊、©なのはPROJECT 、2006年3月10日 出典:画像右、魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's、DVD付属特典パンフレット、キングレコード、2013年3月22日発売、©NANOHA The MOVIE 2nd A's PROJECT 砲撃特化の遠距離戦用形態。カートリッジで強化された砲撃は更なる威力やバリエーションを生む。 シューティングモード同様、形状自体は管理局魔導師が使用している量産型ストレージデバイスと変わらない。 劇場版では前述したカノンモードの進化形態として、『バスターカノンモード』となっている。 エクセリオンモード 出典:魔法少女リリカルなのは/魔法少女リリカルなのはA's ビジュアルファンブック、晋遊舎刊、©なのはPROJECT 、2006年3月10日 レイジングハート・エクセリオンのフルドライブ。 本体破損を防ぐ出力リミッターを解除した状態で、魔力消費と引き換えに爆発的出力を生み出し、術者の全能力を底上げする。 位置的にレイジングハートのシーリングモードに対応するモードだが、形状はまるで違い、もはや杖というより槍である。 この時点ではフレームの耐久力や使用者の負担など問題が多く残っていたため絶対に使ってはいけないと要注意をされた。 劇場版ではなのはのバリアジャケットカラーの装甲部品が新たにつけられている。 A.C.S展開状態 A.C.Sは「Accelerate Charge System」の略。瞬間突撃システム。 エクセリオンモード及び後述のエクシードモードのみ使用可能なシステムで半実体化した魔力刃『ストライクフレーム』を備え、六枚の羽根を広げる。 因みに、本来は近接戦の為のシステムではない。 エクシードモード エクセリオンモードに変わり登場した形態。旧エクセリオンモードを改良したもので強力な射撃と大威力砲撃に徹底特化している。 段階的に出力をエクセリオンモードと同等以上に引き上げるブラスターシステムを切り札とし、 常に莫大な魔力消費と引き替えに能力を底上げするエクセリオンモードより負荷が少なく、一点特化により無理なく扱いやすくなっている。 ブラスターモード レイジングハート・エクセリオンのリミットブレイク。 使用者であるなのは、デバイス両方の限界を超えた力を無理やり引き出す自己ブーストによる強化。三段階のリミッターがつけられている。 聖王ヴィヴィオ戦では単なる強化にしか見えなかったが、 本来は後方からの一撃必殺を目的とした、短時間の使用が望ましい文字通りの切り札らしい。 ゲーム版によるとA'sの時代から開発中だが存在していて、なのはもテスターだったらしい。(11歳での撃墜も当然である) ◆ブラスタービット ブラスターモード時に、なのはが任意で最大4機まで展開できるレイジングハートの子機。 レイジングハートと同様の機能を持ち、本来なら近づく必要のある拘束魔法や砲撃補助など、あらゆる面で強化を施す。 単独飛行形態 ストライクカノンとフォートレスの同時使用に際し、両腕がふさがってしまうなのはのために自分で考えた形態。 一部第五世代デバイスのパーツを使用している なおvivid以降ではスタンバイモードに羽を生やした状態で独立稼働したりする。 ヴィヴィオがセイクリッド・ハートを入手するまではヴィヴィオのデバイス代わりも務めていた模様。完全にオカンである。 やたら高性能な面が目立つが、シューティングモードなど、 モブの魔導師が持っているデバイスと形は大体同じなので、規格そのものはわりと普通なのかもしれない。 しかし長いことやってるリリカルなのはシリーズだが、 レイジングハートの製作者はいまだに判明していない。(INNOCENTのRH-1はおそらくグランツだが) まさか、ロストロg二二二⊃← 出典:とらいあんぐるハート3 リリカルおもちゃ箱、ivory、JANIS、2001年6月29日、©1998~2002JANIS©ivory 実はアニメ版のレイジングハートは3代目。 初代は嘘予告で月村忍が造った完全な兵器だった。 このレイジングハートには重火器二対にスタンガン、発煙機能、世界時計、スケジュール&アラームにスナップショットを搭載しており、 さらに男のロマンを追求する忍の趣味で自爆機能を搭載する等、 とってもお買い得だと忍が言っていたが、いかがわしくも物騒な兵器だと、なのはは怖がっていた。 どこかの恭也は喜びそうだが……。 近年のレイジングハートはこの初代に戻りつつある。 ちなみに魔法の国も領収書が落ちないのでお金も要求されるなど、世知辛い世界観だった。 2代目はリリカルおもちゃ箱でリンディが所持していた赤い宝石、起動時には白い羽がついていて、中心がハートだった。 そのため元祖レイジングハートの対となっているS2Uには、クロノの心を映した鋼の翼がついている。 2代目も起動詠唱が存在し、これを唱えなければ、なのはは起動できず魔法も使えない。 起動詠唱は以下の通り。 我……、使命を、受けたもうものなり。 ……契約のもと、その力を解き放ち給え……。 ……風は空に、星は天に……そして、不屈の魂は、この胸に。 この手に魔法を……。 ……レイジングハート、力を! 最終回でシンクロするまで必ず唱えていた。 2代目も意思疎通ができるが、光り輝くだけでその意思はなのはにしか伝わらない。 2代目の魔法は祈願実現型魔法、なのはの強い意志と魔力を使用して願いを叶えるという正統派な魔法。 3代目も祈願実現型ではあるが系統が違う。 2代目は副次効果で持ち主の魔力を強化したり、その人特有の力を強化したりできる。妖狐なら妖力とかを。 そんな2代目だが、最終決戦の際壊れてしまった。 そしてリンディ帰還時に久遠には鈴を、なのはには2代目を、思い出としてプレゼントした。 ……壊れ物だが、リンディにはこれしか持っていないのだから仕方ない。 そしてネックレスとして、S2Uと思い出と共になのはを見守っている。 The MOVIE 1stのコミック版の扉絵でこの2代目は登場している。 気になる人は探してみよう。 ●<You haven't heard anything, have you? ――All right. Please add a sentence to my item or revise this. (何も聞いていませんね? ――結構。 追記・修正をお願いします。) △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] そういやS2Uの無駄な翼はレイハさんの対の為だったんだっけ、……S2U(泣) -- 名無しさん (2013-09-09 10 33 23) あんな時期からエクセリオンや開発中のブラスター使ってたらそりゃ撃墜されるほど負担たまるわなぁ -- 名無しさん (2013-10-21 00 29 53) ↑そう考えると何のためにAI搭載してんだってレベルの欠陥兵器だな。 -- 名無しさん (2013-11-09 17 22 51) 原作では魂と書いて「こころ」って読むはずなんだけど……、アニメ版はどっちだったっけ? -- 名無しさん (2013-11-09 17 26 54) AIが処理しても無理だったって事だろ。元よりエクセリオンもブラスターも『極力使わない』のが望ましいけど、必要があって搭載・使用せざるを得なくなったモノだし。ついでに言うならなのはが自分の身体に気を遣わないで出撃したのも原因 -- 名無しさん (2013-11-09 17 32 28) ↑フェイトに心配されるレベルで頑張りすぎるからな二人とも -- 名無しさん (2013-11-09 17 34 11) ↑3キャッチコピーとかでも不屈の魂ってなってるし、変わってないんじゃないかな?…多分。 -- 名無しさん (2013-11-09 17 49 31) ↑ただキャッチコピーのほうのルビは『エース・オブ・エース』だからなぁ。なのはWikiでも不屈の魂表記は一か所しかないし -- 名無しさん (2013-11-09 17 52 59) 主人公の武器が「高性能な基本型で唯一無二の機能はありません」というのはかなり珍しい気がする -- 名無しさん (2013-11-09 18 47 02) ↑レイハさんは極端なオリジナル機構持ってないしな。オリジナルに見えてもなのは以外にも使用者いたり、なのはの要望で付けてるだけでつけようと思えば誰にでもつけられるし -- 名無しさん (2013-11-20 20 18 24) 初代:兵器、二代目:魔法少女の杖、3代目:その中間、次はどうなるのかな? -- 名無しさん (2013-11-26 16 34 43) ↑その前にINNOCENTの「4代目 データ」も追加で -- 名無しさん (2013-11-26 16 47 00) 今分かっている製造者は、初代:忍、2代目:リンディかクロノ、3代目:???、4代目:フローリアン博士……こんなとこかな。 -- 名無しさん (2013-11-27 13 46 57) 充実してんな -- 名無しさん (2013-12-29 20 31 10) デバイスなのに劇場版でなのはやフェイトが敗れたのは自分達の性能不足と解析し、自らカートリッジ搭載を進言するとか漢気パネェす。さらにおそるべきは勝負を最後に決めるのは『根性』とレイハさんに認めさせたナノハさんか…… -- 名無しさん (2014-02-11 17 54 15) レイジングハートは日本語だと「起き上がる心」→「不屈の心」ってところだろうか? -- 名無しさん (2014-04-07 00 54 14) "Let's shoot it, Accelshooter"って、「あの虫けらを撃ちましょう、アクセル・シューターで」と聞こえるw -- 名無しさん (2014-05-30 23 49 06) なかの人は東海道新幹線の外国語版のアナウンスをやってます -- 名無しさん (2014-09-01 09 35 28) Don't woryyでいいんじゃないでしょうかはいい皮肉 デバイスの言語は英独で区別してるんだっけ? 1期じゃクロノのデバイスはもろ日本語だったが -- 名無しさん (2014-10-19 02 37 48) ↑一応オリジナルのミッド語だけどね。(AccelがAxelになってたり)、クロノのS2Uはリリちゃの設定故かリンディさんの声だったらしいけど -- 名無しさん (2014-10-19 12 57 42) 使用者の負担を無視してまで要望に応えて出力するあたり、ロストロギアの香りがぷんぷんするぜw -- 名無しさん (2014-11-27 14 44 12) オリジナルクロニクルだと魂にこころのルビがふってあったか -- 名無しさん (2014-12-23 16 27 42) ブルースワットのディクテイターみたいに、電動ブローバック式の玩具出てほしかったな。 -- 名無しさん (2015-01-13 13 07 58) 実は自己進化自己増殖自己再生ができるロストロギアなんだよ!!11!! -- 名無しさん (2015-01-13 14 52 39) 進化し過ぎですから!! -- 名無しさん (2015-06-13 12 57 25) 最近は伝説のボスが似たような声の端末を使ってるよ -- 名無しさん (2015-10-31 02 26 38) もしなのはの手に渡らずユーノがそのまま持ってたら、主に探索・維持・解析・修復方向に進化してたんだろうな。主の望みに沿う方向で。 -- 名無しさん (2023-01-01 01 44 46) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1446.html
『マルディアス』。神々の戦いで一度死に、そして千年の時をかけて蘇った世界。 今この世界では、千年前の戦いに敗れ、封印されていた邪神『サルーイン』が復活しようとしていた。 魔物やサルーインの信徒が起こしていた幾多の事件。それらはやがてサルーイン復活へと繋がる。 世界は再び、千年前のような混沌の時代へと移り変わろうとしていた。 しかし、サルーインと戦う者達は確かに存在していた。 神々が創り上げ、英雄『ミルザ』へと与えられた十の宝石。それらはとある五人の運命を絡め取り、サルーインとの戦いへと駆り立てた。 灰色の長髪をした剣士『グレイ』。 迷いの森を守る弓使いの少女『クローディア』。 エスタミルを根城とする盗賊の少年『ジャミル』。 三角帽を被った術士の女性『ミリアム』。 トカゲの姿をした亜人『ゲッコ族』の戦士『ゲラ=ハ』。 彼らは現在、かつてミルザが神々に認められるために行った試練……通称『最終試練』に参加している。 その内容は、試練の地で十二体の強大なモンスターを打ち倒し、祭壇まで辿り着く事。 そして今、彼らは十二体目のモンスターである金色の龍『ゴールドドラゴン』との死闘を繰り広げていた…… 魔法少女リリカルなのは ―Minstrel Song― Event No.00『最終試練』 【十字斬り】 グレイが刀を振るい、金の巨躯へと十字の傷を付ける。 刃渡りは長く、切れ味も十分。それなのに大したダメージを与えられていないらしく、龍が傷をものともせずに接近。 そのままグレイへと牙を剥き、喰らいつく。 【かみ砕く】 その牙の鋭さは、かつて戦った同種の ―但しこちらの方が遥かに強いが― モンスターで身をもって味わっている。 それ故にこれは喰らってはいけないとすぐに理解し、チッと舌打ち。そのまま刀で受け止めた。 龍と人間の力には元々大きな差があり、それはこれまでの戦いで鍛えられたグレイでも例外ではない。せいぜい三秒もてば良い方だろう。 「クローディア、援護頼むぜ!」 だが、このメンバーにはそれで十分だ。 ジャミルが愛剣『エスパーダ・ロペラ』を手に、高く跳び上がる。その後方には『藤娘』に矢をつがえるクローディアの姿が。 そのままジャミルは近くの岩を蹴り、ゴールドドラゴンへと飛びかかる。それと同時に矢が放たれた。 【ホークブレード】 【プラズマショット】 【連携:ホークショット】 ジャミルの剣がゴールドドラゴンの背を掻き斬り、そこにクローディアの矢が直撃。 いかにゴールドドラゴンといえど、傷口にプラズマショットという電流付きの矢を撃ち込まれればたまったものではない。 そのダメージから思わず牙を離し、その間にグレイが離脱する。そしてその隙にゲラ=ハが自身の持つ槍『マリストリク』をドリルのように回転させながら接近した。 【螺旋突き】 突っ込んでいったゲラ=ハが傷口へと槍をねじ込んだ。それも先にグレイが付けた十字傷へのピンポイント攻撃。 さすがに傷口への攻撃は効くらしく、結構なダメージはあるらしい。 だがその代償として、ゴールドドラゴンを本気で怒らせてしまった。これはかなりまずい状態だ。 大きく咆哮し、首を空へと向けるゴールドドラゴン。その口からは炎が漏れ出している。おそらくブレス攻撃が来るだろう。 それを阻止すべく駆けるゲラ=ハ。だが、一足遅い。 【火炎のブレス】 辺り一面を焼き払うほどの炎が吐き出された。 その炎はグレイ達へと直撃し、死にはしないまでも多大なダメージを与える。無事だったのはあらかじめ炎の盾の術『セルフバーニング』を使っていたミリアムくらいだろう。 中でもゲラ=ハは前に出ていた分、より大きなダメージを受けていた。先に復活の術『リヴァイヴァ』を使っていなければそのまま倒れていただろう。 「……さすがに最終試練の最後の一体。強いですね」 そう言いながらマリストリクを構えるゲラ=ハ。それに対し、グレイが言葉を返した。 「ああ……だが、時間は稼げた。ミリアム、やれるな?」 【スペルエンハンス】 グレイが振り向いた方向では、先程からミリアムがスペルエンハンスで魔力を高めている。 今使った分のスペルエンハンスがかかると同時にミリアムが気付き、そして答えた。 「大丈夫、これならやれるよ!」 そう言うと同時に、ミリアムに大量の魔力が集まり、それが龍の真下で形を成す。 それは巨大な炎の玉。それがゴールドドラゴンの真下からせり上がり、そして飲み込む。 【クリムゾンフレア】 その炎……いや、クリムゾンフレアが龍を飲み込み、少し地上から離れたところで停止。その上には巨大な陣が形成され、少し遅れて炎が爆発する。 だが、クリムゾンフレアはそれだけでは終わらない。爆発の後に上空の陣が巨大な火柱を落とすという大仕掛けが残っているのだから。 爆発と同時に五本もの火柱が巻き起こり、ゴールドドラゴンを灰燼へと変える……それで本来は終わりのはずだった。 だが、まだ終わらない。ゴールドドラゴンとはここまでやられてもまだ戦えるほどのタフネスを持っている。 「嘘、あれで倒れないの!?」 さすがのミリアムも驚きを隠せない。まあ、無理もないだろう。 何せ自分が持つ限りで最高クラスの威力の術を喰らって立っていられる相手だとは思わなかったのだろうから。 だが、それでも相当弱っているのが見て取れる。倒すなら今だ。 それを理解したのか、クローディアがすぐさま藤娘を構え、グレイとジャミルに指示を飛ばした。 「グレイ、ジャミル、私に合わせて」 そう言うと、すぐさま矢の速射を撃ち込む。それに合わせてグレイとジャミルが追撃。 上空から見れば、この三人がまっすぐ一列に並んでいるのが分かるだろう。 ……そう、ちょうど竜騎士から教わったあの陣形のように。 【龍陣】 その並びに反応したかのように、ゴールドドラゴンを中心とした光の円が地面に形成される。 これこそが『龍陣』。それぞれの連携の末に龍が追撃するという陣形だ。 そこからすぐにグレイが動き出し、次々と連携を決めていく。 【龍尾返し】 【三星衝】 【サイドワインダー】 【連携:龍尾三星ワインダー・龍牙】 まずグレイが懐に飛び込み、ナナメに一閃。そこから横にまた一閃。 そこからジャミルがゴールドドラゴンの急所といえる位置……すなわち、グレイとジャミルによって付けられた二つの傷口と、龍尾返しで新たにできた傷口にほとんど同時に突きを見舞う。 さらにその箇所を性格に狙い、クローディアが蛇のように曲がりくねった軌道の矢を放つ。それは見事に命中した。 そしてここからが龍陣の真骨頂。一頭の巨龍が下から現れ、ゴールドドラゴンを巻き込んで徹底的に大暴れしていった。 さすがにここまでやられて戦えるほど、ゴールドドラゴンはタフではない。 その場でグラリと崩れ落ち、そして倒れた。 決着から数分、彼らは最奥である試練の祭壇へと辿り着いていた。 階段を上り、祭壇を視認。それと同時に、彼らにここのことを物語として教えた吟遊詩人も視認。 ただし、吟遊詩人はいつもとは違い、どこか人間離れした雰囲気を漂わせている。 ……ここまで来れば、この吟遊詩人がただの人ではないことが容易に想像できるだろう。 「お前はいったい何者だ?」 ならばこの男は一体何者なのだろうか。それを疑問に思ったグレイが問う。 それに対し、詩人は答えずにただ笑顔で自分の思っていたことを口にした。 「グレイ、そしてその仲間たち。君達がここまで来ると信じていたよ」 その口調もいつもの敬語ではなく、まるで父親が子供に語りかけるような言葉。 それがグレイの頭にとある可能性を叩き出させる。普通なら誰も信じないような、そんなとんでもない可能性を。 「……まさか」 「そう、私は光の神。神々の父『エロール』だ」 ……どうやらたった今叩き出された可能性は大正解だったらしい。 何故吟遊詩人……いや、エロールが人間として生きているのかはこの際置いておくとしよう。考えても仕方が無いのだから。 それより他に気になることがあるらしく、クローディアが階段を下りるエロールへと聞いた。 「貴方はサルーインより強いのでしょう? ならば何故、自分で戦わないの?」 かつての神々の戦いの時、サルーインとその兄弟……伝説上は『三柱神』と呼ばれているのだが、それらがエロールと戦い、そして敗れた。 三柱神のうち、長兄『デス』と末妹『シェラハ』はその時に降服。しかしサルーインだけは最後まで戦い続けた。 エロールがミルザに宝石を与えたのはその後、すなわちサルーインただ一人を残した時であった。 そこからでも分かるように、三柱神のうち二人を降服させるほどの力を持つのがエロールだ。 ならばエロールが戦えば勝てる。なのにそれをしない。それを疑問に思った結果が今のクローディアの問いである。 エロールはその歩みを止めず、階段を下りながらクローディアへと答えを返した。 「……かつて神同士の戦いがあった。そのとき世界は一度死んだ。それほどに神の戦いは激しいのだ。 私は二度と世界を死なせたくない」 千年前の神々の戦い。それは世界を一度殺すのには十分過ぎる程の規模だという。 エロールはそれを分かっている。だからこそ、自身がサルーインとの戦いに赴かないというのだ。 「なるほどな。でも、俺達じゃサルーインには勝てないかもしれないぜ?」 ジャミルが軽口を叩きながら階段を下りる。それに合わせて他の四人も一緒に下りていく。 「人には自分の運命を自分で決める権利がある。 サルーインの復活を傍観するか、サルーインを打ち倒すか、それともサルーインに敗れ去るか。全て自分達で選ぶことができる」 既に階段の一番下の段に辿り着いていたエロールが言葉を返す。 少なくともこの五人は、サルーインと戦う道を選んでいる。だからこそこの言葉を贈ったのだろうか。 やがてグレイ達五人も階段の一番下へと到達。そしてミリアムはその場で立ち止まった。 「本当は、もう結果が分かってるんじゃないの? やれるかどうかも分からないのに、あたい達に任せるとは思えないもん」 ミリアムが笑ってそう聞く。確かに、勝てるかどうかも分からない……というより、負ける公算の高い戦いをさせるとは思えない。何しろ、負ければ世界が危ないのだから。 だが、その問いはエロールが横に首を振ったことで否定された。 「神々とて、それほど先のことがわかっているわけではないよ」 そう、たとえ神々でも未来というものは分からないのだ。 封印したことによってサルーインの憎しみが増すとは予想していなかった。 サルーインが『ミニオン』という使い魔達を生み出すとは思っていなかった。 かつての戦いで生み出し、ミルザへと与えた宝石『ディステニィストーン』が世界を混乱させるとは思わなかった。 「……全て、私の失敗だよ」 心底悔やんだような顔(帽子と髪型でよく見えないが)でエロールが言う。 未来が分かっていれば、このような失敗もしなかった。そしてその失敗の結果がサルーインの復活だ。 「勝敗はやってみなければ分からない、そういう事ですか……荷が重いですね」 「だが、やるしかない。エロール、俺達が負けても文句は言わせんぞ」 ゲラ=ハの言葉にグレイが言った。それを聞いたエロールが笑顔で答えを返す。 「私はこの世界そのものと、世界に存在する全てのものをいとおしく思っている。 どのような結果も、受け入れるだけだ」 「さて、サルーインの居場所ですが……実を言うと、今はこの世界にはいません」 吟遊詩人の口調に戻ったエロールが、サルーインの居場所を言う。が、それはあまりにも理解しがたいことだった。 もっとも、いきなり『実はこの世界にはいません』というのは驚かないほうが不思議だろうが。 「何だと? それは一体どういう意味だ」 いきなり突拍子の無いことを言い出すエロールにグレイが問い返す。 見れば他の面々も全く理解できていないような表情。中にはジャミルのように「それはひょっとしてギャグで言ってるのか」とでも言い出しかねない表情の者までいる。 だが、エロールは全く動じずにその続きを言う。 「グレイ達が動いているのを感づいたのでしょう。どうやら数日前に異世界へと飛び去ったようです。 おそらくは妨害されないよう、異世界で復活を遂げてからこちらへと戻ってくる……そういうつもりでしょう。 もっとも、転移に使ったエネルギーを取り戻すだけの時間だけ復活は遅れるでしょうが」 サルーインにそのような芸当ができたとは初耳である。千年前の戦いの記録にも、そのような事は載っていない。 だが、事実サルーインは異世界へと飛んでいる。ならば追って復活を阻止、最悪の場合復活したサルーインを打ち倒す必要があるのだ。 「消耗したエネルギーの分だけ復活が遅れると言いましたね……具体的にはどれ程遅れるのですか?」 「……長く見積もっても、あちらの時間で数ヶ月といったところでしょう」 サルーイン復活まであと数ヶ月の遅れが出る。異世界に向かい、探して打ち倒すには十分な時間だろう。 その頃には彼らの中に異世界行きを迷う者など誰一人としていなかった。 ……まあ、どうやって行くのかを一切考えていなかったが。 「私が一度あなた方を地上へと送ります。準備が済んだら北エスタミルのパブまで来て下さい。 そこから私の力でその世界へとお送りしますし、決着がついた頃にそちらへと迎えに行きます」 数日後、北エスタミルで謎の光が確認された。 その光の正体は無論、エロールがグレイ達を異世界『ミッドチルダ』へと送るための力である。 「頼みましたよ、皆さん……」 彼らがいなくなった北エスタミルで、エロールは一人呟いた。 そしてグレイ一行とサルーイン、そして『機動六課』と『ジェイル・スカリエッティ』を巻き込んだ物語は……ここから始まる。 目次へ 次へ